VHFテレビの部品を使った
144MHz 4エレ 八木アンテナの製作
再トライアルしました!


本業で、VHFテレビアンテナを降ろすことが時々あるのですが、これを使って無線用のアンテナが出来ないものかと何となく思い、部品を若干量とってありました。
TVアンテナのマッチングBOXは、エレメントのブームとの絶縁と、エレメントの固定をうまく実現する(同軸の固定も出来る)もので、大変FBと思いました。
エレメントのブームへの取付け部品も便利です。

しかし、ビームアンテナを作るにはアンテナアナライザーが欲しいなぁ、と思いそのままになっていました。
大分前に、OMさんに貸してもらって短縮アンテナづくりに重宝したアナライザーをネットで検索すると、数万円の価格でした。やっぱりなぁ。
駄目元で、「antenna analyzer」で海外物を検索すると、数千円でグラフィック表示の商品が色々と。
破格に思え、大変驚きました。

余りしばしばアンテナを作る私ではないので、お安いツールは助かります。
中華版で写真のような「NanoVNA」という超小型で充電池内蔵の物が、5000円を下回る商品を見つけ、入手しました。

よぉーし、これを使ってひとつ、冗談のような、イタズラのようなアンテナを作ってみよう!

<144MHz 4エレメント 八木アンテナ>
ウチのルーフタワーは小さなものなのですが、430MHz用の八木アンテナの反対側が空いています。
しかし2018年の台風21号のような強烈な風もあったので、小さなアンテナの方が私には安心です。
4エレ、うまく行けば5エレにしようと考えました。

寸法はアバウトなもの
から出発したのですが、2回目のトライアルからは設計ソフトのMMANAを使ったシミュレーションを参考に、3回目のトライアルで、下図(単位はmm)のようになりました。
各エレメントの直径(外径)は、10mmです(MMANAでは、半径を入力するので、5mmとなります)。



決めたら、材料の選定。
輻射器の取付けに便利なマッチングBOX、各エレメントや、ブームと取付けアームは、旧TVアンテナから。
マストクランプは、昔の430MHz用カーテンビームの部品を使いました。

<製 作>
材料を確保したら磨き込み。電気ドリルにバフをつけて磨きました。これで、古い材料にも輝きが戻りました。^^)
クランプは鉄部が赤錆びていたので、入念に磨いて、銀色ラッカーを2~3回吹き付けました。エレメントとブームには、コーティング剤を塗布。

取付けアームは元々水平偏波用なので、垂直用にクランプの穴を開けなおしました。
各エレメントの上端は融着テープでふさぎ、マッチングBOXの不要な穴は、シリコンコーキングでふさぎました。但し、一番下の部分には、水抜き穴を残します。

マッチングBOX内の結線(あっと驚く単純さ!)は、下の写真と図のようです。
(これ、マッチング機能が無いから、マッチングボックスで無いのでは? というご指摘も頂きました。hi.)

  

エレメントに同軸を直結して、少しでもロスを防ぎ、
コネクタ取付けの無理な工作を省こうというものです。
取付けのために同軸を剝いた長さは極力切り縮め、線の先には、圧着端子を取り付けました。
剝いた箇所から端子の穴の中心まで12mmになりました。


エレメントの長さは、測定状況を見て切り詰められるよう、最初は目標より数cm長めにします。
全体を組み立てて仮設用ポールに取りつけ、起こしてみると、ちょっと良い気分に。冒頭の写真のようです。

同軸がマッチングBOXを出た所に、同相電流を阻止してフロートバラン代わりにするため、下の写真のようにパッチンコアを取り付けました。



<調 整>
NanoVNA(他のVNAも同様と思います)で計測する場合、測定周波数範囲を設定したら、給電用の(測定時の仮の物であっても)同軸を一旦アンテナから外し、この同軸を繋いで、まずキャリブレーションを行います。
キャリブレーションには、その同軸を繋いだ先を、ダミーロードに繋いだり、NanoVNAのCH1端子に繋いだりします。
今回の場合は、同軸がエレメント直結なので、繋ぎ込み用の圧着端子が取り付けられるラグを、同軸メスコネクタにはんだ付けして、キャリブレ時の接続に使用しました。
(この直結部をキャリブレーションに含めてしまうことが良いのか、誤差の要因か、後になって、その両方であるような気がしてきました。)

その後、アンテナのSWR、レジスタンス、リアクタンスの測定をします。
トライアルを終わった時のNanoVNAの測定画面は、下の写真のようです。



最初、測定に使う同軸ケーブルを繋がず、NanoVNA単独で、付属の10cmほどの短いケーブルを使ってキャリブレした後に、何mかの長い同軸でアンテナにつないで、測定してしまいました。
測定値はデタラメに・・・。hi.
この測定器は、ちゃんと較正して使うと、最良点の周波数がどこにあるかがすぐ判り、大変便利です。

調整は、各エレメント長さを目標値を念頭に少しずつ切り縮め、その都度NanoVNAで計測しました。
最初のアバウトな設計では、144MHzでかなりのリアクタンス分が残り、またF/B比が11dBと、もう一歩の状況でした。

(クロススペーシングで第1導波器を入れてみました(5エレになる)が、調整がクリチカルになり、これもやめにしました。^^;)

MMANAを使うと、第一導波器を輻射器に近づけてゆくシミュレーション計算で、リアクタンス分が減少し、F/B比が少し改善する見込みが得られました。
例えば、第一導波器の輻射器との距離を最適化の対象に設定し、私の場合SWRの優先度を高くして計算。
得られた距離を改めてアンテナの定義に入力して今度は第一導波器の長さを最適化の対象に設定して、同様に計算。
これを繰り返すなど、納得いくまで何回でも計算します。

得られた結果の寸法にアンテナを改造して、再度仮設し、SWRその他を測定して、エレメントを少しトリミングするなど、トライアルします。トライアル前のエレメント長さは、やはり狙い目より少し長い方が良いでしょう。
(短くするのは簡単ですが、長くするためには、エレメントの再製作になりますから・・・。^^;)

こうして、改めて2回(つまり二日)のトライアルを行いました。

当初、同軸直結部の長さをエレメント長さに加算して評価しました。しかしエレメントの長さを計算上の最良点に合わせても、リアクタンスやSWRが思った値にならず、この直結部がアンテナの一部か、給電線の一部かと考え込みました。(直結方式の限界か。或いは、アンテナがマストに近すぎるか・・・?)
またエレメントの位置を変えると、最適な長さがまた変わり(長くなるなど)、エレメントは第二導波器を除き、全部作り替えました(第一導波器は2回。トホホ)。

前記の輻射器と反射器の寸法は、3回目のトライアルの結果です。
SWRは、144MHz~146MHzまで1.15~1.3程でした。
SWR計で計測すると、1.05以下の値を示すのですが、これはケーブルの損失による反射波の低下によるものかもしれません。

<ビームの測定>
電界強度の測定は、屋根のあちら側にアンテナを仮設し、こちら側に電界強度計を置いて、簡単に行いました。
距離が9m、高低差が4m、中央近くにルーフタワー(と、HF等のアンテナ)という条件で、お世辞にも良い条件とは言えません。^^;)
測定にはハンディトランシーバーと、電界強度計代わりに、RFdBメーターに短いアンテナをつけた、下の写真のようなものを用いました。
RFdBメーターもお安い中華版ですが、レンジ合わせを省略できて便利です。これは、内蔵電池が無いので、ジョークプロジェクトで作った単三ブースト電源を、12V出力にして使いました。



測定条件が良くないので参考値ですが、ビームパターンの測定結果(多角形の方)と、前記アンテナ寸法を用いた、MMANAでのシミュレーション結果を下に示します。
(両方で、スケールの取り方が少し違っています。)
F/B比は13dB程ですが、右のバックサイドに可愛くない出っ張りがあります。測定時に、送信と受信の間に半分割り込んでいだ、ルーフタワー等の影響かもしれません。^^;)


  

冗談半分で始めたプロジェクトが、本気半分になりました。
素晴らしい結果とまでは言えませんが、これで矛を収める事にします。
(ある戦国武将いわく、「勝ちは6分をもって最良とす」とか。^^;)
私にとり、40年余り振りのビームアンテナの製作になりました。

使ってみたところでは、これまで使っていた5/8λGPの時より、入感する局のSが総じて上がったように思われます。
5/8λGPの時に、52のRSレポートを頂いた局(相手もGPアンテナ使用)から、このアンテナで55のレポートを貰いました。
フロントゲインは、5/8λGPに比べてS3つ・・・ 1/4λGPに比べたら、S4つ・・・、かな?

下の写真は、上架したところです。ウチのルーフタワーも、これでフルハウス(?)


永らく温めていたTVアンテナ再利用のアイデアが、現実となりました。それにしても冗談のような製作なので、ジョークプロジェクトにも、リンクを貼りました。hi.





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