通過型抵抗直結式アッテネーター

<抵抗だけのアッテネーター>
430MHzアップバーターの整備を行いながら、よく考えたら、この周波数で使えるアッテネーターが無い!
手許にあるのは、M結合式ばかり。高い周波数では、特性が乱れます。無理無理にこれを使おうか・・・。
それもちょっとなぁ。  そこで、抵抗だけを使うアッテネーターを作ることにしました。

しかし10Wを超える電力で、高い周波数でのリアクタンス成分を持たない抵抗というと、簡単なものではありません。
よく考えると、π型アッテネーターの入側の抵抗には大きな耐電力が必要ですが、これを終端型パワー計やダミーロードで代用できるのではないか? これには大きな耐電力で、しかも高い周波数で無誘導の抵抗が使われています。
減衰量32dBであれば、π型アッテネーターの入力側の抵抗は、52Ωで、50Ω抵抗で代用できそうです。
π型の構成を書き直してみると、次のような回路で構成できそうです。 測定電力は、50Wを想定しました。
勿論、ダミーロードかパワー計の接続は不可欠です。



上記であれば、手持ちのパワー計が使える! 整合の良いアンテナでも同様のはずだ。
π型の残りの2つの抵抗は、もう少し小さな抵抗で済みます。

と、思いついたのは良かったのですが、高い周波数で使えるためには、どんなケースに、どんな配線で組み込んだらよいのだろうか? シールドはどうしようか、配線が長いと、ハイパワー側からの放射も強そうだ。

<同軸ケーブルへの抵抗直結>
あれこれ思案しているうちに、ケーブルへのカットインを思いつきました。
パワー計に繋いだ同軸ケーブルの途中の、網組の隙間を押し広げ、作った穴から抵抗を直接芯線に半田付けして、ダミーロード(パワー計)を含めたπ型アッテネーターを構成するという、宿り木みたいな方法です。
いわば「通過型抵抗直結式アッテネーターです」。hi.

製作中と、完成後の写真を添付します。分岐部の小さなシールド箇所がそれです。

  

写真左  製作中の抵抗直結アッテネーター
写真右  終端型パワー計に繋いだ抵抗直結アッテネーター

<特性は>
パワー計に繋いだ状態で、このアッテネーターの周波数特性を測定した結果を下に示します。
1GHz前後から上の領域に乱れ(ケーブルが長すぎたかな)と減衰量の低下がみられますが、それ以下は乱れも少なく、特に800MHz以下では約30dBが確保されています。
高域についても、計測結果が高く出る方向で、スプリアスが高い目に測定されることになるので、安全サイドと言えそうです。

  

写真左  パワー計に繋いだ抵抗直結アッテネーターの周波数特性計測結果
写真右  抵抗直結アッテネーターを用いた、430MHzアップバーターのパワーとスペクトルの計測状況

<使ってみて>
これまで作ったアッテネーターの中では、一番マシな特性になりました。hi.
このアッテネーターの-32dB出力を、ステップアッテネーターを介してスペアナに繋いで測定しています。
特性の問題を気にしないで使えるので、最近ではこればかり使っています。
(時には、120Wをかけてしまっている事も・・・。 ^^;)

注意事項として、
パワー計、ダミーロード、または整合の良いアンテナを必ず繋ぐ必要があります。
十分頭に入れておかなければ!


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