430MHz用 SWR計


430MHzでは、アンテナとのマッチングが悪くて、自作のパワーアンプのトランジスタを飛ばした事が何回もあります。SWRの測定が必要ですが、HFやVHFのSWR計では、波長に対してピックアップラインが長すぎるようで、うまく測定できません。繋ぐ事も、ためらわれました。
アンテナを作る時のためにもちゃんとしたSWR計が必要と、オークションサイトを探すと、手頃なものがありました。

しかし、ちょっと待てよ。
40年程前に作った、ストリップライン式のCM結合のピックアップがあるやないか。

< ピックアップを作る >
CM式ピックアップは、例えば下図のような構成になっています。同軸でも他の方式でも、送信機とアンテナの間に設けた高周波の伝送線路に、ゆるく結合させたもう2つの線路(終端抵抗を共有しても良い)を設け、それぞれ逆向きから、進行波と反射波を分取(いかにも分布定数)し、検波して直流電圧として取り出すものです。


40年余り前、JA3AHC南城OM(当時の430MHzSSBの有名人)に、アルミサッシを使った2平板の間に丸棒の中心導体を置いた伝送線路で作られた、上図に似た構成の430MHz用のSWR計(パネル、メーターにゴム足までついた、コンパクトでスマートな物)を見せてもらい、刺激を受けました。私も作りたい!

これをお手本にさせて頂くのですが、例によって、まる写しはイヤです。
「あちらが丸棒なら、こちらは帯。あちらが側面オープンの平板なら、こちらは全体を閉じた箱」と、平たい箱の中にストリップラインを置く、トリプレート式で作りました。
その方が、平板の隙間を大きくしやすく(内部の工作がやりやすい)、電流の流れに平行にコネクターを取付る事も出来ると(意味があるかどうか、判りませんが)考えました。

このピックアップさえうまく行けば、後は、取り出した電圧を、進行波と反射波に切り替えて、メーターで測るだけです。検出電圧の測定には、VHF用のSWR計を転用します。(一粒で、二度使える?)
ピックアップの材料には、少しでも電導度の良いものをと、真面目に銅板を加工して製作しています。
出来上ったのが、下の写真のようなものです。

   

写真左  CMピックアップ(ストリップライン式)の内部  蓋を開けた所
写真右  組み合わせたSWR計

しかし出来上ったものは意に反し、OMのものと違って、ダミーロードやパワー計に繋いでも、SWRが十分に下がらないものでした。ガッカリ。
これをモノにしようと、430MHzでアンテナのラインを余りいじると、また石を飛ばすと二の足を踏み、そのままになってしまいました。

このピックアップが構成する伝送線路自体のインピーダンスへも、自信が揺らぎました。
そう言えば、OMのものは、コネクターも真面目なN型やったなぁ(私はアンテナ側がM型)。こんな事も原因かなぁ。
やっぱり、腕か・・・・。

そして40年余・・・・。

< 再度のトライアル >
改めてこのピックアップの調整をするのに、最近入手した430MHzFMのハンディ機が、具合が良い事に気がつきました。
このリグは送信部にパワーモジュールを使っていますが、当該パワーモジュールのデーターシートによれば、SWRが20まで使えるとあります。
ちょっと位アンテナラインでテストしてSWRが上昇しても、大丈夫そう。これや!

ハンディ機とパワー計を用いて、40年ぶりにこのピックアップの調整にかかりました。
上の写真の通り、SWR計本体は塗装が剥がれ、ピックアップのコネクターの色にも、40年の年波が隠せません(私と同じか! ピカピカのコネクターを繋いで写すんやった)。

改めてテストしてみると、市販のダミーロードに繋いでも、パワー計に繋いでも、SWRは1.5ほどありました。
ダミーロードは、500MHzまでSWRが1.15以下のはずです。やっぱりなぁ。

色々考えても、ピックアップラインの突き出しを短くするしか、すぐに実現可能な対策は思いつきませんでした。
5mmほどストリップ(中心の帯)から遠ざけ(写真は、既に遠ざけています)、再度テストしてみると、何と、果たして1.15まで下がっていました。
一発で効果が出るとは!  こんな事も、たまにはあるんや。

< 色々の測定結果 >
試しに送信機側とアンテナ側を逆に繋ぎ、進行波の電圧を見たら、ほぼ同じでした。
挿入損失は、0.3dB程でした。これであれば、実用に使えそうです。

これを使って、スチール机の上に置いた、下の写真のようなモービルホイップのSWRを測定してみると、約1.05を示しました。何と!
ダミーロードよりも整合の取れたアンテナとは!  かなりアバウトに見えていたのですが、hi.

ハンディ機付属のホイップアンテナも試してみました。こちらはグランドが無いので、中継コネクターに繋ぎ、コネクターをスチールデスクの端に押し当てて(電気的接触は無し)みました。こんないい加減な方法でも、1.2~1.3のSWRを示しました。これも、なかなかの出来のようです。

< イタズラ >
40年前から、このピックアップのインピーダンスが、本当に50Ωなのか、という疑問が澱りのように沈んでいました。何分、無限大の幅であるべき伝送線路の上下の平板が、わずか10cm角ですから。10cm=無限大??
理論では存在しない、4面の側壁もあります。平板が、あるべき姿よりも中心導体に近づいていると言え、インピーダンスが50Ωより低くなっている懸念がありました。

伝送線路のインピーダンスを上げてみて、挿入損失や反射波が減少するか、やってみる事にしました。
最初は、中心のストリップの幅を小さくすることを考えましたが、加工はかなり面倒です。 そうや! 平板との距離を変えるか、隙間を作ればいいんや!

そこで、伝送線路の一方の平板、つまりピックアップの蓋を外してみました。いっぺんにパワー計の針はダウン、反射波は跳ね上がりました。 やり過ぎ!  自作のパワーアンプを使っていたら、石が飛んだかも。

そこで母線に平行な隙間が出来るよう、蓋を少しずつずらしてみました。これで、インピーダンスが上がるはずです。
(こんなイタズラをやる人は、まだ居るかなぁ)
開いた隙間が1cm位では、パワーにも反射波にも、余り変化がありませんでしたが、中心の帯が現われる位に開けると、どちらも悪化しました。

と、いう事は・・・・。  作った通りで良かったんや!!
私が理論的なトリプレートの形を、勝手に少し変えて作ったピックアップは、50Ωの伝送線路として、ちゃんと働いていました。

< おわりに >
40年のブランクを経て430MHzのSWR計が使えるようになり、また手持ちのアンテナの出来も良い事が判って、とてもFBな気分です。
見た目は不細工、性能も完全でないかも知れませんが、折角使えるようになった作品ですからこれを使う事にし、オークションは、見送りました。hi.

しかし、これを使って430MHzのアンテナを作るのは、いつの事やろ?

読者のご参考のため、ピックアップの寸法入り製作図を添付します。
材料の銅板は半田付けが大変なので、加工しやすい真鍮板か、両面基板が良いと思います。


CM方式ピックアップの製作図

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