ジョークプロジェクト

好奇心から出発!
CW解読器の製作

CW解読器の外観


<きっかけ>

あるきっかけで、CW解読器の受信状況を眺めていて、自作の虫がうずきました。一度、作ってみよう。
「それを使って、オンエアでCWの腕を上げよう」ではなく、「作ってみよう」になるのが、変わり種なんでしょうね。hi.

ネットを検索し、完全な回路図とソフトの両方が開示されている記事を見つけ、これをベースとしました。
JK1XKP貝原OMの記事です。リンクはこちら。
手許にはちょうど、2行16桁のLCD(バックライト無しですが。^^;)があるし、PICマイコンも手持ちがある。
asm形式のプログラムソースも開示され、コメントもかなり記入されているので、私にもある程度理解できそうです。

<製作の方針>
製作にあたっては、次の方針としました。
1. 好奇心から出発しているのでジョークの範囲とし、高価な部品を使わず、手持ち部品を動員して製作する。
  (ケースはお菓子の缶!)
2. モニター発振器など、使わない機能は、省略する。
3. ダイナミックスピーカーを用い、長時間つけっぱなしの場合も考えられるので、外部電源方式とし、5V~9Vを受け入れる事にする。
4. 多少のソフト変更はやってみる。

よぉ~し、これをまず作ってみよう!

<回 路>
回路図は、くっきりした画像にするため、pngファイルにしました。このリンクをクリックしてください。

NANDの4011Bと、PIC16F84(現在は1827)、LCDのM1632の部分が解読部、2SC1815とLM567(NJM567でもOK)周辺がトーンデコーダ、LM386あたりがAFアンプです。
トランシーバーからのオーディオ信号は少し増幅し、LM567で所定の周波数信号付近(帯域幅にして100Hz程)を選択的に取り出し、on-off信号にして出力します。これをNANDで反転させて、解読部に入力し、結果の文字をLCDに表示させます。

解読部には、キーやキーヤーが直接接続できる、Hand Key入力端子があります。これを使って、まず解読部をテストすることが出来ます。

AFアンプは、オーディオ信号の取り出しのため、トランシーバーのイヤホン端子にジャックを差し込むとスピーカーがoffになる場合に必要ですが、ジャックを差し込んでもスピーカーがoffにならない場合は、AFアンプは不要です。

AFアンプ以外は、電源電圧5Vで動作します。5Vを超える電圧、例えば9Vの外部電源に接続する場合は、三端子レギュレーターなどで安定な5Vに落としてやる必要がありますが、AFアンプは12V位まで動作可能なので、そのままの電圧を供給します
(レギュレーターの負荷軽減と、5Vラインへの影響回避のため)。
ウチではオペレート机に5Vが来ていたり、9Vが来ていたりするので、どちらでも使えるよう、レギュレーターに5V用の低ドロップ(低損失)型のレギュレーターを使っています。これなら、5Vでも9VでもOKです。(5Vを推奨します)

LCDディスプレイのバックライトに電流を多く使う場合、例えば40mAで、電源電圧が9Vの場合、レギュレーターには(9-5)×40=160mWの発熱増となります。
これが12V電源では280mWとなり、レギュレーターICの温度上昇になります(破壊までは行かないかもしれませんが)。
安全策として、9Vを超える電源を使う事は、避けた方が良いと思います。

また、ポピュラーな78L05の場合、7V未満の電源電圧では、十分なレギュレーションが期待できないので、7V~9Vの電源を用いるのが良いと思います。


- LCDディスプレイについて -
LCDディスプレイに、貝原さんはSunlikeのSC1602BS等を使っておられます。SC1602BSと、当初選んだM1632とは、ピン配列の形状が同じで、番号の振り方が逆順になっています。
但し、番号の付け方だけの違いなので、差し替えが出来ます。hi.


<製作と調整>
”解読器”なんて、生まれて初めてです(大げさ!)。
適当なサイズのユニバーサルボードを使い、まずは気になる解読部から作り始めました。PICマイコンには、ソケットを使います。初めは、貝原さんのHPの2行16桁用のソフトをそのままプログラムし、差込みました。
この部分とLCDディスプレイを繋ぎ、Hand Keyにキーを繋いでテストすると、うまく文字が表示されました。
LCDディスプレイに何も表示されない、表示が薄い、逆に真っ黒等の場合は、めげずにLCDのVoに繋がる10kΩの半固定抵抗で調節します。

電源投入時のキーイングスピードの設定は15wpmで、かけ離れたスピードには対応しません。その場合は、プッシュスイッチのUP や Downを適宜押して、近い速度に設定してやります。すると、解読しながら実際のスピードを測定して追従します。
キーヤーのメッセージメモリーを使って電文を入力し、色々なスピードに変化させたら、25wpm(125字/分相当)以上でも、正確に解読されました。とても良い気分。hi.

その勢いで、残りの部分も製作しました。基板は、レギュレーター、トーンデコーダー部と解読部で1枚。AFアンプでもう1枚となりました。
4011Bに繋がるLEDは、信号検知を示し、AFやHand Key入力に応じて、ピカピカと点滅します。AFの好みのトーン(周波数)で検知するよう、LM567に繋がる10kΩの半固定VRを調節します。

トランシーバーに繋いで実際に信号を受信し、設定したトーンで信号が解読されるか、確認します。トーンデコーダーのゲインVRを上げると解読しやすくなりますが、ノイズの影響を受けやすくなります。バンドの状態に応じて加減が必要です。

動作を確認したので、ケースに入れました。ジョークですから、お菓子の缶を使いました。hi.サイズはおよそ、125mm□×45mmHです。
(メーカー製とえらい違いの大型!)
菓子缶の鉄板は薄く、その穴あけは、大きなリーマーを回したら反対側にめくれ返ったり、ハンドニブラーではチョキチョキ切れずに蛇腹のように折れ曲がってニブラーの中へ押し込まれたりと、思わぬ難儀に見舞われました。ジョークが冷や汗に・・・。^^;)
アルミケースの扱い易さを再認識しました。hi.

ともかく何とか出来上がりました。冒頭の写真の通りです。ケースの内部は、下の写真のようです。
LEDは、2個を直列につなぎ、前面と背面に1個ずつ付けました。無線機の操作の時、解読器の背面しか見えないもので・・・。

CWデコーダーの内部

<失敗談>
① 解読部の最初のテストの時に、4011Bをまだ取付けず、手を抜いて2SAのトランジスタ1個のインバーターを使いました。
  これが、信号に続いてリンギングするように発振し、誤作動。貝原さんに問い合わせる一幕に・・・。
  (PIC入りの信号をオシロで見て気がつきました。hi.)
② HFで100W送信すると、AFアンプに回り込みがありました。オシロで調べようとして、回路のGNDがケースに繋がっていない事を発見!
  ユニバーサルボードで、ネジ部にアースランドを作れていませんでした。オソマツ。
③ ケースに入れずに基板単独で動作させた場合、HFローバンドの送信時にモニターから気になるレベルでハム音が出ました。
  回り込みのようです。対策を考えていた時偶然、AFアンプLM386の8ピンに触れるとラジオが入感する(!)事に気がつきました。
  オートダイン検波?? 2ピンでも同様でした。
  これらピンとGND間に、それぞれ0.01μFのパスコンを入れると、ラジオ受信はやみ、回り込みも解決しました(回路図を改訂しています)。

<プログラムのアレンジ>
① 外字の登録
今回のLCDやSunlikeのSC1602BSなど、HD44780またはこれとコンパチブルなLSIを搭載するLCDディスプレイは、00h~07hまでのCG-RAMに、8個分、縦8ドット、横5ドットのパターンで好きな文字を外字として入力できます。
ネット検索で「ホレ」や「ラタ」を外字で表示されている記事を見、私もペイントソフトの鉛筆で外字を8つ作成してプログラムに入れました。
BT、HH、AR、VA、ホレ、ラタ、ヰ、ヱの8つです。
作ったフォントを拡大し、pngファイルにしました(リンクはこちら)。
電源を切れば、これら文字の登録も消えてしまいますが、次に起動したとき、プログラムからまた入力されます。

② CQホレへの対応 (欧文/和文自動モードの場合)
欧文/和文自動切替えモードでは、ツートツーツートツー で 和文から欧文に切り替わり、ホレや トツートトツート で和文に切り替わります。
自動の時でも、違うモードになっていたら、E/J切替えボタンを押すと、モードが入れ替わります。
(ラタでは自動切替えは起こりません。訂正符号もラタなので、そのたびに切り替わると面倒。^^)
しかし、CQホレや、CQホレホレで和文モードにシフトすると面倒なので、これらの場合には和文モードに変えないよう、アレンジしました。
(PAアセンブラ用から、MPASM対応版へ移植してアレンジしました。)
だたし、「ホレK」や「ホレホレK」には、残念ながら対応できません(和文モードに変わります。^^;)

<使ってみて>
解読部の動作が完全であるのに対し、実際のCW受信信号を使うと、未解読(*が表示される)や、誤解読(異なる文字になる)がしばしばあります。
トーンをよく合わせ、ゲインVRを加減して改善しますが、これらが無くなるわけではありません。ノイズが多い7MHzなどでは誤解読などが増えます。
ノイズフロアーが高い場合、信号が無くても、不規則にLEDが瞬間的に光り、動作への影響が懸念されます。
これら、ある程度解読器の宿命のように思います。
それに比べると、人間解読器はすごいですね。私の耳も、十分な速度で解読処理できるようになれば言う事無いのですが・・・。^^;)

<ソフトについて>
今回使ったPICマイコン用ソフトのhexファイルをご希望の方は、メールを送って下さい。

<後日談>
20桁4行のLCDディスプレイ(KKHMF 2004)を入手したので、ソフトを4行用に入れ替え、本機に仮接続してテストしてみました。大成功。
下の写真の通りです。(目で見た画面のコントラストは、もっとくっきりしています。)
表示が、青地に白文字のちょっと派手なものでした(hi)が、SunlikeのSC2004と同じように動作しました。
勿論、ソフトは貝原さんの20桁4行用のソフトを利用し、これにも前述のプログラムのアレンジを行いました。
プログラムのサイズが少し大きくなったので、PICには16F628か、16F819を使います(移植済み)。

20桁4行用のソフト(前記アレンジ版)をご希望の場合も、メールを送って下さい。



その他、LM567付きの10kΩ半固定VRは、半固定をやめて背面に10kΩVRを設置し、それに繋ぎました。
下の写真のようです。
こうすれば、通信機からのトーンに解読器を合わせることが出来ます。




2行のLCDディスプレイも、バックライト付きに交換・・・。うまく行くと、もうちょっと良くしたくなるようです。
ジョークのつもりで作り始めた解読器ですが、いつの間にか本気(意地かな?)モードに・・・。凝り性の性格なのかもしれません。hi.

<後日談2>

同じ貝原さんの回路から出発し、基板を特注してFBに仕上げた方もおられます。
私のジョークプロジェクトとえらい違い!



      JA3TGL 辻さんの作品 内部
 ケースはタカチのYM-180。基板は稲垣さんと同型


 JF3IJE 稲垣さんの作品 外観と、内部(ディスプレイ搭載前の状態)
 ケースはタカチのPF15-3-10を使用し、基板はこれにピッタリ合わせて設計された由



 基板単独で使う、シンプルな作品




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