簡易で小型な 
SGキットの製作
ー 9850_128SG & SCAN計 キットを使用 ー
逓倍器も作りました!



受信機、トランシーバーの製作や、メンテナンスの時にSGが欲しいとは、かねがね思っていました。
しかし大きな問題が二つ。価格が高すぎる(こちらが圧倒的に問題?)、また装置が大きく重い。これを据えるようなスペースはウチにはありません。
一方、「SGは微弱な信号を作り出すために、シールドが命、内部はシールドだらけ」と聞いており、自作が出来るとは全く思っていませんでした。
結局、受信機などの製作・調整に当たっては、アンテナを繋いでオンエア局を捜したり、短いワイヤ―を繋いだオシレーターの信号を受信しながら、「こんなもんやろか」などと思いつつ試行錯誤していました。やはり、SGは欲しい!

<簡易なSGキット>
国内外のネット通販で、「RF Signal Generator」を検索しても、(私の尺度で)これと言うものは見つからず。
そこで、JK1XKP貝原OMが、アマチュア向けに色々な製作情報やキットを提供されていた事を思い出しました。

JK1XKPさんのホームページへのリンク

その中には、複数のPLLを搭載した本格的回路構成のSGの製作情報とともに、DDSを用いた、60MHzまで使える簡易な構成のSGの製作記事(リンクはこちら)がありました。要部が作れるキットの頒布もある由。
シールドはDDSとアンプの部分だけで、内蔵のアッテネーターを使ってS9に相当するレベル(-75dBm)まで出力を絞れると。

多数のシールド板を入ずに、受信機直結できるまで信号が減衰させられるのか、内心不安がありましたが、何せ簡易で小型です。
両の掌に収まりそうなサイズで、私にも買える価格。これや!
チップ部品を用いるとあります。以前に表面実装の基板のチップ型CRの取替えをやった程度で余り経験はありませんでしたが、それでこその小型ですし・・・。イテマエ!
早速貝原OMに連絡し、頒布を依頼しました。キットはすぐに届きました。

<各ユニットの製作>
装置は概ね、下記の5つの部分から成り立ちます。

DDSユニット   AD9850を用いた組み立て済みの表面実装基板(中華版)
制御ユニット    PICマイコンで、DDSの周波数等をコントロールする。
          同時にそれらをLCDに表示する。
SG本体ユニット  DDSの出力信号を受け、可変抵抗でレベル調節後、高速オペアンプで増幅し出力する。
          また、増幅後の信号をサンプリングし、その強度をログアンプで電圧に変換して出力する。
         (外部からの信号も入力し、別のログアンプで信号強度を出力できる。)
RF dBm計   上記ログアンプの出力を受け、それをdBmに変換してLEDに表示する。
アッテネーター  10dBが1段、20dBが2段の、シリアルアッテネーター。
         (シールド無しで50dBの減衰!)

DDS以外は、自分が組み立てます。(3段の各アッテネーターは、既に組み立てられていました。1cm角程の小ささ!)

部品が何せ小型ですから、ルーペやピンセットを用い、25Wの半田ゴテや、40Wのコテを調光器で加減して取り付けました。が、
チップ部品のCR、特に1608というサイズのものは、ゴマ粒を3枚にスライスしたように小さく、なかなかうまく行かずに時間がかかってしまいました。^^;)

ピンセットで挟んでも、どこかへ飛んで行ったり、尖った物で押さえても、やはりバランスを崩してはじいてしまったりなど。
(ピンセットは、出来れば短く、ねじれにくいものが良いと思う。)
時間がかかると、コテ先が酸化しやすく、余計に半田の付きが悪化、という悪循環。hi.
半田の溶け込み不良も、通電後に1か所見つかりました。何十年ぶりや? トホホ。
組み立て後、外部信号用ログアンプの動作が思わしくなく、OMに相談した結果、チップコンデンサーをクラックさせてしまっていた(ルーペで見ても判らない)ことが判明したという、お恥ずかしい一幕も・・・。^^;)

貝原OMのアドバイスで、OMのHPの中の「SMD(表面実装部品)実装半田付けのヒント」(リンクはこちら)というページを拝見し、 「ハーン、そうだったかー」。
半田には、鉛フリーを使っていたのですが、溶けにくいときは無理せず鉛入りを使った方が良いとも思いました。

ユニットの組み立て後、マニュアルに沿ってそれぞれが機能する事を確かめました。
(アッテネーターは、組み立ての後に確認)


写真は、各ユニットを仮配線でつなぎ、動作テストしているところ

<全体の組み立て>
貝原OMの製作記事では、ケースにタカチのYM-150を用いておられますが、この密度で組み上げる自信はなく、一回り大きいYM-180(180x40x130mm)を使いました。

ケースのサイズに紙を切り、下の写真のようにユニットをその上に並べて、配置を検討しました。
SG基板に取り付ける可変抵抗は、軸が基板に平行に取り出せるよう、小さなパネルを縦向きに作って基板に穴をあけ、取りつけました。
配置計画には少し時間をかけ、高周波信号のむき出しの配線が極力少なく、それに近づく他の線が少なくなるように、またパネル面のツマミ等の配置と基板の取付高さと位置が整合するよう、そしてやはり製作がしやすいように計画します。

パネル面のスイッチやつまみ、コネクタ等は、それぞれを操作する時に、出来るだけ互いが邪魔にならないよう、配置します。
また、操作の頻度を考慮して、どれの配置を優先するかを決めます。
(こんな事を言っておられるのは、キットが既に試行錯誤段階を終えているからですが・・・。)



電源コネクタからの最初の配線(プラス、マイナスとも)は、それぞれフェライトビーズに通しました。
DDSとSG本体ユニットを入れるシールドケースから出る高周波ラインはRCAコネクタで接続。
また、電源やログアンプ出力ラインは貫通コンデンサ―を介し、DDSの制御信号ラインは、(ひとまとめに)フェライトコアを通して、それぞれ高周波が回り込むのを防ぎました。
(これら、効果のほどは不明。そこまで必要ないのかも知れません。^^;)

裏のパネルにつける2口のRCAコネクタが欲しくなったのですが、緊急事態宣言の折、日本橋へ行くのは憚られ、両面基板と半田付け型のジャックを使って自作しました。hi.
また、シールドケース出入りのコネクタと貫通コンデンサーも、同様に小さな両面基板に取り付け、それをシールドケースに取りつけました。

シャーシの穴あけの時に思った事がひとつ(今回、殆ど間に合いませんでしたが)。
基板は、作成または入手した時、部品を取り付ける前に、すぐに型取りする事。但し、取り付けた時の上面から。
基板に紙をかぶせて指の腹で押さえ気味にこするか、鉛筆を斜めにして軽くこすると、ヘリや穴が写し取れます。
これで、基板の正確なサイズと、取付穴の位置が掴めるので、シャーシの穴あけがより正確になります。

部品取り付け後や、完成基板の場合は無理ですが、紙を下に敷いて縁や穴をシャーペンでなぞると、ほぼ写せます。

ケース内やパネル面のレイアウトを考える時、基板や部品をかたどった紙やツマミなどを並べてみると、良いアイデアが浮かぶことがあります。(私はこれを「福笑い」と呼んでいます。hi)

dBm計のマイナス表示LEDは、手持ちに長方形のものがたまたまあったので、これを7セグメントディスプレイの左端に接着しました。

組み立て後の外観は、冒頭写真の通りです。内部写真を下に添付します。

  


<調整・試運転>
前記の半田付け由来の問題を除き、各ユニットとも正常に働きました。
出力をスペアナで測定したところ、10MHz、21MHzでは最大で、それぞれ約15dBm、10dBm、50MHzでは-5dBm(下記改造後、11dBm)でした。
DDS+SG本体からの最小出力は、10MHz、21MHzでおよそ、-45dBm、50MHzで-50dBm(改造後、約-40dBm)でした。

スプリアスの測定結果は、例えば21MHzの場合では、下のように高調波も少なくきれいなものでした。



50MHzに関しては、貝原OMのオプション、周波数拡張キット(リンクはこちら)の説明記事に沿って予め、DDS基板上LPFのマイクロインダクターの、トロイダルコイルとの取替えと、SG本体出力へのLPF増設を行いました。
スプリアスの測定結果を下に示します。SGとしての使用には問題なさそうです。



気になる内蔵アッテネーター出の信号強度を調べてみました。
下図は、21MHzで、SG本体出力にアッテネーター減衰量を加味した出力推定値(設定値)と、スペアナによる測定値を比較した結果です。



-90dBmというレベルまで、設定値にかなり近い(差は3dB程)測定値が得られました。
また、外付けで20dBアッテネーターを併用すると、-110dBm程まで絞れることも確認しました。

<使ってみて>
早速、SGをトランシーバー(TS-600)に繋いでみました。初めての直結です。
出力設定-75dBmで、S9を少しだけオーバー、外部アッテネーターを併用すると、S1まで絞ることが出来ました。
信号音も濁りなく、綺麗でした。

SGと言えばシールドのオバケと思い込み、自作でここまで絞れるとは思っていませんでした。
良いキットだと思います。貝原OMの技術力に敬服。
私にとり夢が叶う装置で、製作するのが遅かった位の気分です。hi.

これで、オンエア局を捜して受信し、音声で振れるSメーターとにらめっこしたり、オシレーターをあっちの机の下に置いたり繋ぐワイヤーを付け替えたりなどから解放です。バンザイ! hi。


-逓倍器の製作 -
SG製作の余勢を駆って、また表面実装の練習も兼ね、このSGの出力を2倍、4倍に逓倍して200MHzまで使えるようにする、周波数拡張モジュールも作り、逓倍器を製作する事にしました。
やはり、JK1XKP貝原OMがキットを頒布しておられます。次のURLです。

周波数拡張モジュールのページへのリンク

今度は、下の写真のように短めで先端が細く、ねじれないピンセットを使い、前記SMD実装半田付けのヒントを参照した結果、チップ部品実装の作業性が少し向上、半田ごての酸化も少なくなって、能率が上がりました。hi.


上はいつものピンセット、下がねじれないピンセット

今度は、フラットパッケージのICを、チップ抵抗やコンデンサより先に取りつけました。
(溶けた半田を流すように付けたり、もしも失敗して半田を吸い取る時に、巻き添えにならないように)


貝原OMのご協力で、10dB×1段、20dB×2段のアッテネーターも内蔵し、下の写真のようにSGキットと良く似たスタイル(ワンパターン?)で組み込みました。今回のケースは、SGより一回り小さい、YM-150です。

  

順調に動作し、最大出力は72MHzで10dBm、144MHzで6dBm得られました。
SGからの入力を-10dBmとし、逓倍器の内蔵VRを加減すれば、モジュール本体の出口で約-30dBmまで無理なく低減できます。アッテネーターも合計ほぼ50dBmの減衰が得られました。

144MHzを受信したところ、信号音はきれいでした。

スプリアス(200MHz以内の範囲。高調波は除く)は、76MHzの場合、100MHz以内の範囲で-34~-44dB、144MHzの場合でおよそ-30~-34dBでした。
用途からは、悪くない値と思います。
(SGからの入力を-10dBm以下にすると、出力を低減する事が出来ますが、スプリアスが増えます。)

200MHz以上では高調波等結構出ていますが、高調波にも430MHz等、それなりの使い道があると考え、LPFは当面付けずに置く事にします。hi.



                     前のページへ

                     Home Page