ジョークプロジェクト

C-MOSの感度を引き出す?
電流検出式タッチスタンバイスイッチ

スタンバイスイッチが付いたスタンドマイクで、スタンバイ時に「ガチャン」などと音がマイクに入るのが気に入らず、70年代からタッチスタンバイスイッチをマイクに取付けた、写真左の様なものを使っていました。

C-MOSを使い、指を通してGNDに流れる微小電流でICをオンにする方式から、静電容量式に回路を替えて使っていたのですが・・・。

  

トランシーバーが少し増えておもちゃのようなスタンドマイクを繋ぐようになり、別にスイッチボックスが必要になりました。
また、CW運用の時にスタンドマイクを引っ張り出す(ブレークインが性に合わないもので)のもイマイチのため、単独のタッチスタンバイスイッチを作ることにしました。写真右の通りです。

<もう一度C-MOSでトライ>
タッチする指を通じてC-MOSのゲートとアースの間に流れる微小電流を検知するには、指の電気抵抗の値が問題です。
テスター棒2本を指に当ててみると、当て方によって1~8MΩと変化しました。
電源電圧を5Vとして、下図のように抵抗で分圧してC-MOSのゲートに供給するものとします。



図のように、指の抵抗をC-MOSとアースの間に位置づけ、電源とC-MOS間に固定抵抗を接続します。
指で触らなければ、C-MOSゲートはHの電位になりますが、触ると、抵抗値に応じてゲートの電位が下がります。
C-MOS(スタンダード型Bタイプ)のスペック上、ゲートをLとする電圧はMAX1.5Vとありますので、指の抵抗が最大8MΩの場合、固定抵抗は19MΩ以上必要となります。
指の抵抗や、IC特性のバラツキもありますので、固定抵抗値は30MΩとします。
(以前使っていたC-MOS式のタッチスイッチでも、ここまで高い抵抗値にはしていませんでした。)

これで、何とか感度良くタッチを検出してもらいたい!

<回路の説明>
種々トライアルの結果、回路は下図の通りになりました。
昔風のスタンダードBタイプ(バッファー付き)のNANDゲートIC、4011Bを用います。原理上、消費電流が微小なので、電源は(5Vより低いですが)、単4乾電池2個とします。出力素子には、やはり電流を消費しないスイッチングMOSの2N7000を用います。


注: タッチロック電極とタッチオン電極を、それぞれVddに結ぶ30MΩは、後尾の「感度の改善」のため、
   53MΩ(33MΩ+10MΩ+10MΩの直列接続)に、いずれも変更しました。


タッチスイッチは、タッチのあとロックするタッチロックと、タッチしている間だけオンになるタッチオンの二つあります。

ゲートICの4011Bのうち、U1-1とU1-2は、RSフリップフロップを構成し、タッチロック電極がLになれば、フリップロップがセット状態にロックされ、U1-2の出力(4ピン)がLとなります。スイッチオンの時にこれをH(リセット状態)とするために、タッチロック電極と電源を100pFで繋ぎます。
タッチロックの解除は、タッチオンスイッチで兼用します。これをタッチした瞬間、フリップフロップはリセットされ、前記4ピンはHになります。

タッチオン電極のタッチにより、タッチの間、U1-3のゲートの8ピンがLとなります。この入力と上記のU1-2の出力のいずれかがLとなれば、U1-3の出力がHとなり、これがタッチ電極から得られた信号となります。

この信号によりU1-4を使って、「送信中」を示すLEDを光らせます。しかし電池駆動のため、電流を極力節約しなければなりません。そこで、「超高輝度LED」と称するものを調達し、LEDの消費電流を70μAとしました。「高輝度」のLEDでも、点灯は判りました。

当初、これで直接2N7000を駆動したのですが、タッチオン電極を極く軽く触ると、LEDが弱く光ることを発見しました。オシロで見ると、何と信号は方形波! 約60Hzで100V電源由来と思われ、体が誘導を拾っているようです。(オーディオアンプの入力に触るとスピーカーが「ブー」と鳴る、あれか!)
そこで、半波整流のように、ダイオードDiとコンデンサーを用いて、方形波を平滑回路の出力波形のようにさざ波状にすることが出来ました。
Diに並列の1MΩは、コンデンサーにたまった電荷を、信号がLになった時に放出するためのものです。

なお、
① ダイオードDiの、逆方向抵抗値は、1MΩ以上必要です。また、1~2MΩの場合は、並列の1MΩを省略します。
② またこのDiには、1N60タイプの点接触ダイオードを用いていましたが、1N4148のような接合型スイッチングダイオードに替えても動作しました。
③ 30MΩの抵抗は、53MΩ(33MΩ+10MΩ+10MΩの直列接続)に変更しました。
④ 2N7000をバイポーラトランジスタや接合型FETに替えると、上記”平滑回路”のコンデンサーに絶縁が無くなるので、NGです。
⑤ U1-1出を1MΩでアースに繋いでいます。
   当初、これが無かったため、スイッチオンの状態で電源を切ると、次にスイッチを入れた時に、オンのまま立ち上がりました(!)。
   (2時間以上電源を切っておけば、オフで立ち上がった。)
   種々トライアルの結果、この抵抗で問題解決しました。フリップフロップ回路の中の電荷の抜け口が無かったためと思われます。

<製 作>
タッチ電極は、絶縁の良いものをと考えて、ガラスエポキシの片面基板をエッチングして作りました。
パターンは冒頭の写真のような、あばら骨のようなものになりました。指で触れたときに、タッチロックやタッチオン電極とコモン電極にまたがる場所を多くするため、また、それらの間隔を狭くするためです。
もっと狭く、すだれのようなものも考えたのですが、余り狭くすると、絶縁低下の恐れがあると考え、これに落ち着きました。
左の部分がタッチロック、右がタッチオンです。中央はコモンです。タッチオンの方に確実なタッチが必要のため、そちらが気持ちだけ広くなっています。

ケースには、タカチのSW-65Sを用いました。小さいです。
ここへ電池2個を組み込む場合、残りのスペースは僅かになります。そこへ電源スイッチや出力コネクタを取り付けると更に残り僅かです。
電池と回路基板の相当部分を重ねなければなりません。
電池ホルダーに電池を装着すると、高さは14mm。ケースの深さは21mmだったので、相当部の基板の高さを(取付高さ込みで)残り7mmに納めなければなりません。

ケース内部の様子は、下の写真のようです。



ピンヘッダーの利用、部品の縦向き配置、ICソケットなど、飛んでもハップン! 基板取付けのスペーサーは、厚手のワッシャーとスプリングワッシャー各1枚のみです。コンデンサーも横(斜め)向きです。hi.
これで、基板高さは一部を除き7mm未満になりました。

<使ってみて>
これでHFから2m、SSBやCW、自作トランシーバーやメーカー機、出力は500Wまで使いますが、問題なく動作しています。
Diを使った平滑回路のため、タッチして素早く出力オンになりますが、離したときはわずかに遅れてオフになります。
確実に出力がオンになるようにした結果ですが、瞬間的にオフにする、或いはこれをキーイングに応用するためには、平滑回路のコンデンサーまたはDi並列抵抗の値を小さく、また平滑回路(同時にインバーター等)の段数をもう少し増やさなければならないと思います。

電源を入れていても、送信しない時の消費電流は1μA以下、送信時も70μAのみ。電池は軽く1年持っています(液漏れに要注意です。hi)。

製作時、指の抵抗は1~8MΩでした。冬に手は大分乾燥しましたが、乗り切ったようです。今後さらに手がカサカサになった時、どの程度の抵抗値で収まってくれるか、ちょっぴり気がかりではあります。
若い頃は、何の問題も無かったのですが・・・。
手が乾ききり、ひび割れてくるまで乾燥させること自体に問題があるのかもしれません。hi.

<感度の改善>
回路図の通りで3台のトランシーバーに繋ぎ変え、問題なく動作していました。
ただこれらの場合、タッチ電極に前記のように60Hz(100V電源由来)の誘導電圧が加わっている事が判っています。これは微弱なものですが、タッチの感度を上昇させます。
トランシーバーとの接続を外し、このタッチスタンバイスイッチを単独で動作させると誘導が無くなり、場所にもよると思いますが、感度が少し低下する事が判りました。
そこで、二つのタッチ電極をVddにプルアップする抵抗を、さらに大きくすることで感度を向上させることにしました。回路図下の注記の通りです。
これで、感度が少しUPしました。

試しに誘導が少ないと思われるガランとした場所、公園や駐車場などへ移動してテストしてみましたが、異常なく動作しました。
これで使っています。





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