トランシーバーのお話

  ← 私の無線での製作の原点は、当時のハムのご多分に漏れず、こういうものでした。

中に赤くヒーターがともり、何とも言えず「働いている!」という感動がありました。その代わり、スイッチを入れても、しばらく待たないと立ち上がって来ない、かったるさもありました。

<バルキーなリグ>
私のシャックに最近まで存在していた最古の真空管式リグは、写真左下の160mの送信機です。70年代初めの作品です。
3ステージ(こんな言葉、ここに書くまで忘れてました)で100W出力。しかし、何とバルキーなことでしょう。
真空管の時代では、これでも結構密度の高い方だったのですが、シャックのスペース捻出の、最初の標的になって、処分となりました。(終活の始まり)

   

当時のバルキーさは、こんなものではありませんでした。写真右上は、上と同じ頃に作った6mのアップバーターです。何じゃコリャ。
元々バルキーなところへ、電源を内蔵させるため、終段管と回路を取外してしまい、こんなにスカスカになりました。

これは実用性があり、TS520から初めて6mのSSBにQRVし、随分よく使いました。但し、AMが出ないのは不便でした。hi。
しかし、余りにバルキー、つまり場所取りのため、最近、とうとう分解してしまいました。(これも終活?) これでも、落成検査に合格した殊勲のリグだったのですが・・・。

<作っては、壊し>
それにしても、どうしてもっと古いリグが無いのかって? それは無銭家だったからです。リグに飽き足らなくなったら改造をし、それでも満足できなくなると、とうとう作り変えとなります。しかし、前の部品を再利用しなければ予算が足りず、結局極力部品を取り外す事になります。作っては壊し、作っては・・・・ というのが定着していました。 しかし、限りあるスペースを考えたら、それが一番、合理的だったのかも・・・・。

ところで、いつまで真空管のリグを作っていたのか・・・・・。
   それは80年代になるまで続きました。

左の写真は、80年代初めの私(若いなー)のシャックですが、写っている機器の半分以上に真空管が入っています。hi,hi.

ラックの左下隅に、トリオの真空管式オシロ(キットでした)、その少し上に、9R59Dも、写っていますね。

これらは無くなりましたが、当時のリグの7割方は、今も残っています。
と言う事は・・・・。 今のシャックの窮屈さは、押して知るべしです。

巨大なリグの入る隙間は無く、作る(か、たまに買う)機械のために、1台を処分するか、棚の隙間に合わせて寸法を決める、この頃です。hi,hi.

<アップバーター方式>
しかし金欠病は容易には治らず、1台のトランシーバーから、上のバンドへアップバーターで持ち上げると言う事を、しばしばやりました。TS520から6mだけでなく、2m、430MHzへも上げ、それぞれ違った雰囲気を楽しみました。

         
写真左 430MHzアップバーターと、 右、144MHzアップバーター

430MHzにヘテロダインで持っていくには同軸共振器の使用が不可欠(と当時は考えられていた)で、これを如何に簡便かつスマートにやるか、と言う事が、当時の430SSBメンバーの関心事となっていました。

思えば、430SSBにはメーカー製が無い時代で、出てくる人は、互いに皆顔を知っていました。hi,hi

同軸共振器のシャープさに感動し、2mのアップバーターも、この方式で作りなおしました。結果は上々でした。

1200MHzのアップバーターも製作にかかりましたが、何せ測定器が何もなく、同軸共振器(左写真)をこしらえたところで、長い休眠に入りました。復活は千年後?


<50MHzオールモード機>
しかしTS520の28MHzから430へ持ち上げるのは、いかにも遠く、首が伸びてしまいそうです。イメージ周波数も気になります。

そこで、6mをベースとするべく、6mのトランシーバーを製作しました。下の左の写真がそれです。これに2バンドのアップバーター、併せて3バンドそれぞれのリニアアンプ、それ用の電源をつなぎ、各バンドに50Wで出られるようになりました。

上記全部に、2m、430の同軸共振器のバンドパスフィルターをくっつけて、電監で検査を受けたら、担当官から「これ全部で1装置ですか」とあきれられました。

このトランシーバーはしばらく使いましたが、VFOの周波数目盛が荒いため、バンドエッジやフォーンバンドの端に近づく事が出来ませんでした(今なら、PICマイコンで小型の周波数カウンターを作って組み込むのですが)。また、バンドの上と下での感度差、出力差を縮める事が出来ず(やはり腕が足りない)、結局TS-600(これも、アップバーター出力端子を増設した)を買ってしまいました。残念!

その後、クリスタルフィルターの再利用のために、このトランシーバーをまたまたばらしてしまい、完成状態での内部の写真を撮るのを忘れてしまいました。
重ねて残念。

        

<50MHzポータブル機>
6mは好きなバンドで、ポータブルのトランシーバーを3台製作しました。

1代目は60年代の作品で、水晶発振4チャンネルのAM方式、2代目は70年代前半、PSN方式のSSB+CW、3代目は70年代後半の作品で、まじめなフィルタタイプのSSB+CWです。ケースも毎回自作しました。現存するのは3代目のみで、上の中の写真のものです。レストアして今も使えます。トリオのマイクを流用しています。

上の右の写真は、このポータブルトランシーバーに取りつけて使う、2m用ポータブルアップバーターです。ポータブルですからアンテナも内蔵です。
親亀の上に小亀を乗せるようにして使います。

しかしこれらと、最近の○○817の大きさと機能を比べると、いやになってしまいます。hi,hi。

<PLL VFO>
TS600は、良い機械だったのですが、QRHが玉に傷。そこで一念発起、70年代からあこがれていたPLLにチャレンジする事にしました。

70年頃のCQ誌記事を参考に、1段のPLLでVFO製作を試みましたが、考え方に無理があり(そんな事に気もついていなかった)、全く作動しませんでした。

明くる年の元旦、偶然6mでPLLの事を話題に、現に自作PLLのVFOを使用している京都の局のQSOを耳にし、信号の弱い(相手は9エレのアンテナを横へ振っていた)のをがまんしてずっとワッチしました。
QSOの後、ブレークを入れ、やおら話を聴いて、レベルの違いに圧倒されました(全く理解できなかった、hi,hi)。
厚かましくも、翌日早速家へ押しかけ(上記トランシーバーを車に積み、案内してもらいました)、よく見、教えてもらいました。正月2日に、突然押しかけるとは、何と礼儀知らずなのでしょうか。hi,hi.
それでも大変丁寧に教えていただきました。

これを元に5重PLLの構想を考えて作り始め、ちょうどその年の暮れに完成しました。

   
  TS600の上に載せたPLL VFO                PLL VFOの内部

PLLが5つも入っているので、回路はかなり複雑ですが、それをコントロールするユニットも、A/B VFO とメモリー1チャンネルしかない割には大変大きく、ごらんの通り、トランシーバーと同じか、大きいくらいのサイズとなりました。hi,hi。

性能は大変満足の行くもので、長いこと現役です(今でも使うことがあります)が、「この大きさは何とかならんか」と強く思いました。
そこで、せめてVFO全体をボード1枚に載せる事と、それを搭載したトランシーバーの製作を目指しました。

また、VFOの周波数も通常の短波帯ではなく、60MHzと設定しました。

1年余の試行錯誤を重ね、何とか実現にこぎつけました(写真左下)が、スペース上4重ループが限界で、ダイヤルを回すと、信号音が「ドレミファ」位にはっきり階段状に変化しました。うーん、やっぱり不満だ。
これが、マイコン制御への長い寄り道に入る原因になったのです。

       
 4重PLL 60MHz VFO  マイコン制御 DDS+PLL VFO

<マイコン制御のVFO>
80年代中ごろ、「マイコンとは何か」知るためにボードマイコンを1個購入して、つくづく眺めて(手も足も出ない)から、実際にプログラムを作成して作品があれこれ出来あがる頃には、いつしか10年近くが過ぎていました。hi,hi。

沢山のマイコン、周辺機器や利用機器、エレキーまでさんざ寄り道をした末、念願の60MHzVFOが出来あがっていました(写真右上)。90年代半ばです。

今度は、ダイレクトシンセサイザーとPLLを組み合わせてマイコン制御としました。とてもシンプルで、面積もスコスコに余裕があります。

<再び、50MHzオールモード機へ>
これで、一たびは(??)VFOにケリがつき、ようやくこれで、トランシーバーに戻る事が出来ました。

気を相当に取りなおし、やおら送受信IF、ジェネレーターなどの製作に取りかかりましたが、長い間にクリスタルフィルタの特注に応えてくれるメーカーなど無くなり、フィルタの自作まで必要となりました。
各ユニットの製作は、左の写真のように、ぼちぼちと進み始めました。
AM、FM、SSB、CWと、欲張っております。hi。

しかし、既に回路を大方忘れてしまっています。大丈夫かいな。hi,hi。


そんな97年、外地常駐となり、トランシーバーどころでは無くなり、プロジェクトも長い休眠に入ってしまいました。
                       ~ この件、続編へ続く ~

<エレクラフト K2 キット>
  外地勤務となったシンガポールで、今度は米国製のHFトランシーバーキットを製作しました。

これは完全にバラバラの部品から組み立てる、骨のあるキットですが、小型でHF全バンドをカバーし、PLL方式VFOも搭載して完成度が高いものです。
しかも約1週間で組みあがる、作りやすいものでもあります。
キットの調整に使う周波数カウンター、電圧計をキット自体に内蔵している、基板をケースの構成要素にもしている、VXOで水晶発振子を2個並列にしている、クリスタルフィルターが可変帯域で、キットの一部として製作する、メモリー情報を不揮発メモリーに保存して、バックアップ電池を使わないなど、簡易型のQRPトランシーバーとはかけ離れた、目からうろこの、スグレモノでした。

やはり、メーカーには脱帽。

このようなキットは別として、最近、リグを製作するには、年単位の製作期間が避けられないような気がしています。作っているうちに陳腐化が始まったり、作り初めの部分の設計や考え方を忘れ始めたり、笑えない状況が、頭の老化現象と共に出来しております、hi.




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