SDRトランシーバーの試作
<きっかけはVFOのディスプレイ?>
DSPicを使って、昔苦労したフェージングタイプSSB用の音声用PSNが、高精度で作れる・・・、という話がネットに。
開発者のTj Labの上保さんに連絡し、ソフトをダウンロードさせて頂いてテストしてみました。音声帯域全体で、驚きの正確さで90°位相差の信号が得られ、舌を巻きました。
このTj Labさんの記事を見ると、カラーの2重ダイヤルの目盛板がギアダイヤルのように回転するVFOのディスプレイが眼に止まりました。
リンクは、こちら これは、素晴らしい! 明るく、見やすく、そして昔懐かしい!!
DSPicは既にESP32をベースに替え、マルチバンドのVFOやSDRの段階まで進んでいる由、何だか新しい世界をチラ見したような気分になりました。hi.
このディスプレイを搭載したVFO、トランシーバーを是非作ってみたい!
しかしこちらは、SDRもESPも、それをコントロールするArduinoも、全くズブズブの素人です。
井の中の蛙が、月を眺めるような気分もありました。何年かかるやろう?
<VFOの仮組テスト>
まずは、マルチバンドのVFOを試してみる事にしました。システムは未経験のArduino。正月2日に書店で入門書を買いました。hi.
VFOのソフト(スケッチ)をダウンロードさせてもらい、友人や、既にSDRを作成されていた、JG3PUP山口さん、そのご友人でSDRのもう一人の開発者、WH2Q後藤さんにアドバイスやご協力を得ながら、ブレッドボードで仮組してみました。
コントロールにESP32開発ボードを使い、これで下に写るエンコーダーの信号を読み込み、発振器のPLL、Si5351と、ディスプレイを動かします。
最初、設定をうまくやれていなかったのですが、やり直してうまく動作しました。下の写真のようです。
これは部品も少なく、中国手配のデバイスもうまく動作しました。しめしめ。
入門書を買ってから、20日程経っていました。
ブレッドボードで仮組のVFO。 下に写るのはロータリーエンコーダー。
発振器のSi5351は、スプリアスに注意して使った方が良さそうです。
<SDRジェネレーター>
上記VFOに並行して、ジェネレーター部分のSDR製作の準備にかかっていました。
ブロック図がTj Labの下記ページに公開されています。
リンクは こちら
SDRは、ESP32-S3を中心に構成され、受信時、送信時とも30kHzのキャリア周波数を基準に信号を受け入れ/出力します。
それを基本に、信号を変換、ヘテロダイン等して、16.93MHzで送受信します。
BPFに帯域が20kHzのセラミックフィルターを用いるので、スプリアスは相当にカットされそうです。
後藤さんが、氏のHP(リンクは こちら)に、このSDRの解説をアップされています。
リストの上位に、”New”と付記されたリンクが貼られています。
私は後藤さんから、このSDRと、VFO、ミキサー(周波数変換)の各ユニット用の基板を分けて頂きました。
氏からは、これらの回路図、VFOユニット用スケッチ、部品の諸元や調達先のリスト、組立やコンパイルの手引きなども提供頂きました。
部品は、国内調達を基本にしましたが、一部には中国調達も交えました。
各位のアドバイスで、チップ部品の多くをマルツから入手しました。かなり少量から注文を請けてもらえました。
判らない事が時々あり、後藤さん、PUPさんや、上保さんにも相談しました。皆さん、ありがとうございます。
出来上がったジェネレーターユニットが下の写真です。はがきの半分ほどのサイズです。
このSDRは、SSB、CW、AM、FMのオールモードで、IFのシフト、可変帯域幅、ノッチフィルターもついた優れものでした。
<VFOとミキサーユニット>
実は、VFOユニットを最初に作りました。部品の密度が低めだったので・・・。hi.
HFから144MHzまでカバーしています。
このユニットは凡そはがきサイズで、ジェネレーターとミキサーユニットを上に取付けられるようになっています。
また、SDRのコントロール等に使うスイッチ付きVRも、ここに取付けるようになっていました。
VFO用のディスプレイと、SDR用のディスプレイ(Sメーターやバンドスコープなどなど表示)は、その反対側に取りつきます。
当初、PLLのSi5351の実装に半田ブリッジを作ってしまい、同ICを飛ばしてしまいました。トホホ。気を取り直して付け替え。
ミキサーユニットはDBMと、VFOからの信号受け入れ系統を送受信に共用し、送受信用の各アンプと、受信用のバンドパスフィルターをも装備したものです。
ここの出力で、-5dBm程(7MHzの場合)が得られました。
当初、ここに用いたアナログスイッチのFSA3157(中国調達)が動作せず、後藤さんの情報により4157に取替えて、無事動作するようになりました。やはり中国調達のリスクが出ました。hi. (但し、他の中国調達品は全部動作しました。)
下の写真は製作途上で、ディスプレイ側から撮ったVFOユニットです。受信用プリアンプをオンにしており、VRの軸が赤く光っています。
VFOユニットにジェネレーターとミキサーユニットを取付けた状態が、下の写真です。
<パワーアンプとLPF>
このユニットに続けて、送信用のBPF、QRPのパワーアンプとLPFを設けることにします。
そこまでの構成を下のブロック図に示します。
送受信の切替えはリレーで行います。
今回は試作なので、パワーアンプは7MHzモノバンドのQRP、出力はmax3Wとしました。
7MHz以外で送信する場合は、このリレーを動作させず、ミキサーユニットの出をそのまま出力することにします。
この切替のために、リレーユニットを製作しました。
リレーユニットには、ミキサーユニットからBAND信号をパラ取りして供給し、BAND0を選択した時に送信時リレーを動かす自動機構を盛り込みました。
(BAND0には10MHzも含まれるのですが、私は10MHzに出ていないので・・・。^^;)
また、外付けアンプのスタンバイ等用出力のため、スタンバイユニットも設けました。
これらに合わせ、ミキサーユニット等には、スタンバイ信号の取り合いに便利なようPTT入力にダイオードを挿入するなどの小さな改造を行いました。
リレーユニットとスタンバイユニットの回路は、こちら
パワーアンプは昔作ったユニットを流用しました。BPFは、アンプユニット上の複同調1段とします。
このアンプ、5W余り取り出せますが、放熱器が小さいので発熱が多く、抑えて使います。hi.
BPF手前のVRは、外付けアンプを用いる場合にドライブを調節するためのものです。
パワーアンプの回路図は、こちら (手書きですみません)
LPFの回路図は こちら Cは選別し、Lは実測して巻き幅を調整しました。
これらをひとまとめにして、下の写真のようにケースに入れました。試作なので、ケースはお菓子の缶です(実はジョーク?)。hi.
令和のユニットと昭和のユニットが同居したような姿です。 見た目のアンバランスには目をつぶることにします。hi.
蓋を閉じた外観は冒頭写真のようです。
<動 作>
VFOのダイヤルを回すと、ギアダイヤルのように目盛板が回り、また早回しするとスピードが加速してQSYが楽になります。
受信時はIFシフト、パスバンド調整、ノッチフィルターが混信対策に便利です。またリアルなSメーターは見ていて楽しいです。
自作機にバンドスコープというのも、嬉しい機能です。
送信では、SSBモードでシングルトーンを入れ、出力をスペアナでモニターしたのですが、逆サイドバンドが全く見つかりませんでした。何と!
開発者の上保さんに聴いてみると、「見つかるわけがない。音声の周波数を上げているだけ」と言われ、目が点に・・・。hi.
送信時の出力は、各電波モード毎にソフトで若干調整できるようになっています。
CWでのサイドトーンの音量も調節できます。
パワーアンプは放熱器が小さく、温度上昇のために出力低下が起こるので、連続波となるFMやAMの出力は小さめに設定しました。^^;)
LPFは、スペアナで周波数特性を測定した時は、目的周波数の7MHzでのロスは0.5dBなどと小さくても、実際に回路に入れると出力が2~3割減少(-1dB以上に相当)、或いはそれ以下となりました。
色々トライアルしたのですが、設計上の遮断周波数を少し高めに設定し、計測上のロス0.3dBで辛抱する事にしました。hi.
パワーアンプの出力が、50Ωからずれているためかも知れません。
気になる出力(7MHzで2W)のスプリアスは下図のようで、-60dB程に低減されていました。
これでひとまず、受信はオールバンド、送信は7MHzモノバンドというトランシーバーになりました。
<外付けパワーアンプ>
上記の出力を、RD16HHF1を使った手持ちの50Wアンプでパワーアップしてみようと考えました。
そのため、先のリレーユニットに似た、リニアアンプリレーユニットを製作しました。
LPFも改めて組込みますが、これは耐圧が少し高めの部品を用います。
ケースはちょっと悪ノリですが、またお菓子の缶を使いました。hi.
中身は下の写真のようです。
50Wアンプの出力をスペアナで測定した結果が下のようで、スプリアスは-60dB以下になりました。
<あとがき>
オールバンドのSDRを使って、送信時は7MHzだけ増幅して出力するというショートカットではありますが、実用域となりました。
井戸から月を眺めていた蛙が、地上に出られたかな、という気分です。
着手してから半年余りですが、私にすれば超高速です。hi.
FBなシステムを利用させて頂き、また皆様にご協力頂いたお陰です。
各位に感謝します。
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