144MHz ポータブルアップバーターのレストア記
<ポータブルアップバーター?>
これは、トランシーバーにアップバーターを繋ぐのは当たり前だった私が、自作50MHzポータブルトランシーバーに子亀のように乗っかり、歩きながら144MHzSSBにオンエア出来るようにと、40年ほど前に製作したアップバーターでした。
アンテナ内蔵、出力は2Wです。
製作後少し使っただけで、長い間棚の最上段で眠っていました。
元はと言えば、電監検査を受けたアップバーター1号機に使っていた送信ドライバーユニットや受信ユニットを有効利用して作ったものです。
この周波数構成では、ヘテロダインで得た144MHzと、親機の50MHzの3倍波の150MHzの分離が大きな課題なのですが、電監検査の時は、真空管での電力増幅段と1/4λ同軸共振器フィルターを用いて、乗り切りました。
写真左 144MHz ポータブルアップバーター
写真右 144MHz 2段ヘリカル共振器 (板金工作に、1号機の名残がある)
しかし半導体だけで作るポータブル機で、大きな1/4λ共振器無しで、これが十分に出来ているか、実のところ自信がなく、使用には不安が伴っていました。頼みの綱は、送信段最後に入れた、2段ヘリカル共振器のフィルターだけでした。
今年はシャックのリグを、基本、全部使えるようにしようと整備を進めていたのですが、このリグについては自信が無く、かなり後回しになっていました。
上記50MHzポータブルトランシーバーが、機能とスプリアス両面で使えるようになったため、ついにこのアップバーターの番になりました。当トランシーバーの、アップバーターとの4回路切替スイッチ(故障リスクは単連の4倍! 多分もう、壊れていると思っていた)がOKだった事も、背中を押しました。意を決して、「よし、やったろか!」
アップバーター行きの送信信号ラインにもBPFを入れ、綺麗な信号になっていました。
<スプリアス退治>
まずスライドスイッチの接点を洗浄し、電源を入れると動作しました。とりあえずやれやれ。
送信出力をスペアナで見ると、予想通り、150MHzと138MHzのピークが-40dB程しか下がっていませんでした。
ファイナルアンプ出のスペクトルと比較すると、高調波がヘリカル共振器のお蔭でかなり落ちている事が判りました。
50MHz入力と、LOを仮にDBMに繋いで出力を見ると、かなり色々ピークが出ていたのですが、試しにこれをドライバーの50MHz入力端子に繋いでみると、これでも動作。バッチリ、上記二つのピークが大幅に減衰していました。これはいける!
← DBMのじか付け
さらに改善のため、次の改造を行いました。
① ドライバー冒頭のシングルバランスミキサーを、通常のアンプに変更
② ミキサー入りIFにアッテネーターを入れて、上記二つのピークを最小にセット
③ 局発を、47MHzの2逓倍から94MHz原発に変更
④ ドライバーの複同調部1箇所の結合コンデンサーを、2pFに変更、
ヘリカル共振器も同様に変更
(これらにより、出力は2Wから1.5Wに低下した。12V電源では1W。)
⑤ (ヘリカル共振器をファイナルアンプの前に持ってくると、発振傾向が強くなった。
ファイナルアンプからの高調波も、さらに削減が必要になるため、これはとりやめた。)
以上により、近接のスプリアスは-60dB以下となり、ピークの数も減りました。
高調波は-50dB位あったので、π型2段LPF、T型アンテナフィルターをそれぞれ付加してみたのですが、
・ π型は、減衰特性の測定では、2倍波で20dB程度の減衰が得られるものの、実際に装着してみると、減衰の効果は殆ど無し、
・ T型も、4次以降の高調波に効果が見られるものの、2次、3次に効果が無く、出力は30%余り低下。
(電池の12V運用では、1Wを確保できない)
フィルターの減衰効果は、単純にdBを足し算出来ないなぁ~。
T型は損失の面で無理があり、π型は4段以上のものを挿入する十分なスペースが無いため、これ以上の改善を断念しました。
-60dBが確保できないので、電源は12Vとし、新スプリアス規格にかなう1W出力で運用する事にします。
写真左 出力のスペアナ測定結果
写真右 レストアを終えたアップバーターの内部
<レストアを終わって>
以上により、一応、不安なく使用できるものになりました。
高調波の抑圧が思ったようにならなかったのは心残りで、「めでたさも中くらいなり」ではありますが、これまで「使えるものにならないのでは?」と、半分諦めていたこの装置が使えるものになったのは、やはり嬉しい事です。
40年ぶりにアンテナを繋ぎ交信してみて、試運転完了。ようやく戦列復帰しました。
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