FT-690mkⅡのレストア記

<50MHzオールモードのサブ機の調達>
6mオールモードのメインリグとして使っていた自作機が改造の長期戦に入ったので、棚の下の段に降していたTS-600(VFOは外付けPLL)がメインに昇格しました。しかしこのリグも寄る年波で寿命も心配なので、サブ機の調達にかかることに・・・。

50メガに出るだけでなく、
① 既存の2m、430MHz用アップバーターの親機にもならなければならず、
  (サブ機に144MHzや430MHzがついていたら、意味が無い。?)
② アンテナ端子からアップバーターのドライブ信号を取るのであれば、QRPの方が良く、
③ 置き場所を考えると小型の必要もあり、
④ それでもVFOはPLLで、100Hzステップより細かいステップが必要。 

などと考え、ヤエスのポータブル機FT-690mkⅡを調達する事にしました。6mポータブル用には、SSB、CW用の自作機があるので意地もあり、これまで買わずに辛抱していたアイテムでした。
そう言えば、このリグはVFOが25Hzステップで、「マイコン制御ができればこんな妙手があるんや」と思った事を思い出します。

オークションをいくつかフォローし、手頃な1台を入手しました。但し、動作未確認との事でした。

  入手したFT-690mkⅡ (レストア後)

<さて、動作確認>
電源端子をよく見ると、DCプラグのコア側がプラス(ウチの機器は、全てマイナス)、仮の変換コネクタの製作から始まりました。

さて、電源を入れてみると、照明が点灯し、音が出ました。しかし、ん? 表示周波数が勝手に少しずつ変わります。
付属のマイクを接続していたのですが、「あーっ! マイクだけトリオや!」。マイクを抜くと、周波数が変わらなくなりましたが、送信には入れられません。

ウチにはヤエスのトランシーバーが2台あるので、マイクコネクタのピン配置を確認してみると、どれもが当機と違っていました。こんなの、アリかー?
同じメーカーの3台のトランシーバーの全部、マイクに互換性が無いとは・・・。

取り敢えずアンテナを繋ぎ、まずSSB、CWの受信機能からチェックすると、オンエアしている局が受信できました。
よしよし。

マイクはKenwood機での現用品と交換、コネクタ部を改造し、当機専用のマイクをしつらえました。
気を取り直してパワー計、スペアナに繋ぎ変えて送信出力をチェックすると、
① パワーは定格値2.5Wの半分以下、1Wしか出ない。53メガ台では、0.7Wほど。
② 40メガ台以下に、近接のスプリアス。
③ 送信周波数の上下各9kHz離れて、スプリアス。
  いかにもPLLの比較周波数(9kHzでやるカラクリは、??)が切れていない模様。

  

写真左  レストア前の出力スペクトル(スパン10MHz)
写真右  レストア前の出力スペクトル(スパン100kHz)

これは、手ごわい。
サービスマニュアルは手に入らず、取説には回路図が無く、ネットでもなかなか見つかりません。
このリグ、殆ど、ジャンクとしてオークションに出そうという気になりました。

<送信部の整備>
だったらせめて、清掃、洗浄。
ケースのカバーやパネルはアルコールで清掃、ツマミは石鹸と歯ブラシで洗浄、ケース付属の金属部はクレンザーで磨いて錆も取り、クリアラッカーをスプレー。(マイクも分解し手入れしました。)

外観がかなり良くなり、気分がちょっと上向きに。hi.

よく探して、回路図はネットから入手できました。
また、当機のレストアに関するネット記事を検索した結果、次の情報が発信されていました。
① パワー不足の原因は、ドライバ出BPFの調節がズレの場合が多い
② アンテナマッチングの調整が必要
③ 9kHz間隔のスプリアスは、PLLの不調で、VCOが原因の場合がある



写真左 メイン基板    写真右 PLL、パワーアンプユニット

いずれも、写真付きの丁寧な解説です。
回路図でも確認、
①(メイン基板上のT18、T21)と②(PLL・パワーアンプ基板上のTC05)の調節をし、ALC(VR07)も再調整してパワーは定格の2.5Wを回復。
特に、BPF調整の影響は大きく、40メガ台のスプリアスも無くなりました。やれやれ。
③は、PLL・パワーアンプ基板上のVCO出力、PJ01をピンポイントのプローブで当たってスペアナで確認しながら、同基板上のシールドケース内に入ったVCOのf設定用トリマ(TC01)を少し動かすと、すぐに消えました。

  
写真左  レストア後の出力スペクトル (スパン250MHz)
写真右  レストア後の出力スペクトル (スパン100kHz)

良かったー。
SSBのマイクゲインは、今回のマイクには少し不足のようだったため、メイン基板上のバラモジ入りの半固定VR04を右に回して、設定を上げました。

<ようやくウチのリグに>
改めてアンテナを繋ぎ、2.5WのQRPで滋賀県の移動局(50W。当方は59で受信)をコールし、55のリポートをもらいました。(出力は13dBの差ですから、Sが4つの違いは納得。)

昨日は殆ど処分するつもりだった当機、一転してウチのリグになりました。めでたし、めでたし。

しかし、1976年に発売されたTS-600に代えて、86年発売の当機が予備とは。また、自作機の改造が終わるまでにTS-600が壊れなければ、出番が無い当機。出番が来た時にはアップバーター用コントロールボックスを製作しなければ役に立たないのだが。この買い物、欲しがりの虫の陰謀だったか・・・?


ご注意 : このレストア記は参考用のみとします。記事の内容についての責任までは負えません。自己責任においてご利用ください。


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