レストアを通じての保管へのヒント

一昨年来、20年以上使わなかった無線機、入手した古い無線機、測定器や電源装置の整備を大小20台位行いました。
割とすんなりと動いたもの、手ごわかったものもあります。
それらを通じて、機器の保管に関して感じた事、諸氏が先刻ご承知の事ばかりと思いますが、恥を顧みず(?)に書いてみます。

<”やっぱり”の要整備アイテム>
要整備の原因は、何と言っても接触不良が一番ですね。下記の部品は、接触不良に陥りやすい代表的なものでしょう。

・ ボリウム、半固定ボリウム
  ボリウムは、密閉型でも不思議と接触不良になった。小円柱型で密閉の半固定ボリウムは接触不良が少なかった。
・ ロータリースイッチ  特に、密閉されていないもの
・ スライドスイッチ   スライドスイッチだけが接触不良という場合もあった。
・ 波型スイッチ、スナップスイッチ  密閉されているが、それでも接触不良は起こる。
・ コネクター
・ バリコンの、シャフトとボディ間。 スプリングとシャフトの接触不良が多い。
・ リレー  カバーの無い物、密閉されていない物

これら、簡易な復活法は、何と言っても接点洗浄剤(接点復活剤ではない)ですね。しかし、その効果がどの位長持ちするかには、少し疑問があります。
可能なものは、分解して布で、或は隙間からせめて綿棒などで磨くのがベストの方法だと思います。
接点洗浄剤を含ませた紙でこすっている事もあります。^^;)  コネクターにも、接点洗浄剤は有効でした。

磨いたスイッチや開放型リレーには、私はそのあと普通、シリコングリスを接点にうすく塗りつけています。これで薄い膜を作り、空気による酸化を防ぎます。

バリコンのスプリング部の接触不良は、VFOに時々見られます。接点洗浄剤の吹き付けでは、効果が十分に出なかったことがありました。装置に組み込まれた状態では、限界があるのかもしれません。

接触不良以外に、次のようなものもありました。
・ パネル前面のツマミの錆
・ リード線付け根の芯線の腐食 (これは、次第に線の中を進んでゆく)
  特に、装置の外に取り出している線。
  マイクコードにも、この種の腐食がしばしば発生していた。

これらの錆、腐食は、装置の後ろ側(通常、壁側)より、パネル側(通常、部屋の中向き)に多いように思われました。
パネル前面に取り付けたサムホイールスイッチ(接点の数が数十ある)は、激しい腐食に至りました。

<故障の少なかった例>
これまで、保管が長かったが故障が少なかった機器には、次のような事情がありました。

・ 箱に入れて保管していた。
・ 元箱に、ビニール袋に包んだ状態で保管していた。
・ ケースに開口部が殆ど無い。
・ 要部がキャビティ構造(閉じられた構造)
・ シンプルな構造だった(要するに、部品が少なかったという事か)。
・ 時々使っていた。

逆に故障しやすい、或はひどい劣化を起したものには、次のような場合があります。

・ ケースに開口部が多い
  放熱が必要な場合が多いので、ある程度仕方が無いのですが。
・ ケースの上面に開口がある。
・ コネクターに、何も差し込まれていない状態
・ スイッチやボリウムが多い(これは、当然でしょう)

<接触不良、錆の原因と対策>
接触不良や、錆の原因は、金属表面の汚れと酸化と思われます。
酸化している金属の表面に、結露のような模様を見た事もあります。

空気やほこり、とりわけ水分が出入りしにくい環境に置く事が肝要と思われます。
この事から私は、昨年来、しばらく使わない機器等に次のような対策を取り始めました。 ← 遅い!

① 装置をビニール袋にきっちり包む。
② カバーをかぶせる。
③ 小型の機器は、箱に入れる。
④ 袋や箱に入れない場合、同軸コネクタにはキャップをかぶせる。
⑤ コネクタは、可能な場合差し込んでおく。 (差し込めば接触不良にならない訳ではありませんが。) 
⑥ ケースの開口部に、内側から黒い紙を貼り付けて塞いだものもあります。
   発熱のあるものには、この対策はNGです。 hi.
⑦ 部屋のドアを確実に閉め、台所やファンヒーターなどの湿気が入らないようにする。
⑧ ケースで、金属が露出したものには、クリアラッカーを吹き付ける (見栄えだけの効果ですが)
   金属メッキのあるツマミは、磨いた上でクリアラッカーを吹き付けたものもあります。
⑨ 差し込まないコネクターに、その部分だけ小さなビニール袋をかぶせる。

<酸化以外の故障>
チューニングのずれは調整で対策可能、部品そのものの経年劣化(液晶の劣化や、入手した真空管が経年で空気入りになっている、稀な例もあった)は、諦めて部品を取り替えるしかありませんが、次のような例がありました。

・ ケミコンの液漏れと、それによる容量抜け
・ 液漏れによる基板のにじみ、著しい場合、基板銅箔などの腐食

これら、ケミコンの取替え、にじみの清掃などが必要ですが、出来る範囲に限度もあります。

- 驚いた事例 -
80年代に、同じFMハンディ機を2台購入し、たまに使っていました。出力はあり、受信も出来たのですが、出力をスペアナで見ると、周波数が等間隔で驚くほど多くの、レベルの高いスプリアスを伴っており、使えない事が判りました。2台とも全く同じ症状で、偶然ではない事も判りました。
技術ハイレベルの方がこれを修理された(私は、遠く及ばない)結果、ケミコンが液漏れし、表面実装で高密度の基板の銅箔を腐食していた由でした。 ← 偶然でないなんて、アリ? 表面実装の高密度基板が、信じられない症候群に ^^;)

<接触不良、錆対策の効果について>
これら、効果については、ロングスパンで見る必要があります。
しかし、明らかにやった方が良い対策も多いと思います。

えっ? もっと使ってやれ?  そんなに長く使おうとするな? 

・・・・・。



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