リニアアンプのお話 その2

<144MHz 2B94 リニアアンプ>
ストリップラインの真空管リニアアンプという、あつものに懲りた私は、一転、オーソドックスな2m用アンプをこしらえました。

また、あのツノが2本、プッシュプル用の真空管、2B94です。
昔ゆかしいレッヘル線同調を採用し、カラーテレビのトランスを搭載して、電源内臓(と言ってもケースは無い)のリニアとしました。

ある時期、真空管式のカラーテレビが一斉に寿命を迎え、捨てられました。トランスは重宝しました。)

写真が出来たリニアです。
800V程をプレートにかけ、何の問題も無く、すんなりと50Wが得られました。ファンも無しで、静かなものです。プッシュプル回路に何とも言えない良さを再発見したような気がしました。

<50MHz 807プッシュプル リニアアンプ>
ところで当時S2001という真空管が、手頃なサイズと使いやすさのために大はやりし、TS520はじめ、多くのリグに搭載されました。ところが、その原型である6146という真空管は、既に時代遅れになっていた807(写真左)と、カタログ性能がそれほど違わなかったのです。

807は、その構造から見ると、グリッドやカソードの電極リード線が長く、如何にも浮遊容量やインダクタンスが多そうです。しかし最高使用周波数はやはり6146と同じ、60MHzとあります。へそ曲がりの反骨精神がムクムクと頭をもたげてきました。

807は、だるま管と呼ばれたST管のひとつで、私がはじめて手にした真空管と同じタイプです。807が売られているのを見たらすかさず買い、数本が集まっていました。

そこで、その内の2本を使って、良さを見なおしたプッシュプル回路で50MHzのリニアアンプを作ることにしました。プッシュプルのためには、普通、ペアの真空管が必要です。しかし、ペアどころか、製造年月日もわからない球ばかりです。

結局、グリッドバイアス調整の回路を、1本ずつ独立に作り、バイアスのアンバランスだけは回避する事にしました。

出来あがったアンプが左の写真です。

電極線が長いので、長いはかまをはかせてシールドしました。hi,hi。赤いひげのように伸びているのは、中和線です。電極線の長さが、このような形でも現れています。これに800Vをかけると、最大で80Wが得られました。動作は問題無く、安定でした。
「どんなもんだ、S2001なんか、要らないやい」と言った気分で、6mSSBに出ました。hi,hi.
807を知っている人からは、「まさか」といった反応が得られました。hi,hi。

<50MHz FET リニアアンプ>
時代が下り、実用化が進んできたV-MOSのFETを用いたリニアを私も試してみる事にしました。2SK408、409で、勿論半導体ですが、何と70Vもかけます。

キャラメルより小さな石で、余り大きなものではないので、3パラプッシュ、合計6個を直並列につないで使う事にします。CQ誌の記事を参考にし、大きなトロイダルコアにコイルを巻いて、50MHz用に作りました。左の写真です。

最大では、100W近くの出力が得られ、しめしめと思って一旦スタンバイしたら、バシッと言う音がしました。「ありゃ?」と思って送信しなおしたら、パワーが出ません。

あれこれ調べたら、石が2発飛んでいました。泣く泣く石を買ってきて付けなおし、もう一度やってみたら、また100W出た後スタンバイで“バシッ”。3パラプッシュもするから、無理がかかりすぎているのか。2パラプッシュでもう一度やったら、やはり“バシッ”。頭を抱えました。これで普通のプッシュプルになりました。

「これは、トロイダルコアにエネルギーがたまり過ぎている。」と考え、空芯コイルでやってみました。これなら大丈夫ですが、パワーは下がります。「う~~ん。」

μ(透磁率)の少し小さいコアに変え、中をとりました。また、スタンバイした時に出力側のリレーが同時にではなく、少し遅れて切れるようにし、絶対に無負荷状態にならないようにしました。これで石が飛ばなくなりました。

結局2パラプッシュで落ち着きました。これは陽極効率が大変高く、70%程に達しました。信じられない高性能です。そのためか、出力が最大で80W程出せる割に放熱が少なく、クールなアンプです。音がしなくて静かなので、今は6mではこのアンプを主に使っています。

<430MHz トランジスタ式 20W リニアアンプ>
バイポーラトランジスタのアンプでは、430MHz用を1個作りました。FMのブースタで、弁当箱くらいの大きさ、頭に放熱器を乗せたものが大はやりしましたが、考えてみるとこれは非常に理にかなった形です。私もこの方法でやりました。

何せ無銭家ですから、ケースの材料もあり合わせで、外面は黒ラッカーの手塗り。430SSB仲間から、「銀メッキをやるくらいなんだから、せめて真鍮で作って、クロムメッキ位したらどうかい?」と冷やかされました。そうは言われても、こちらは計画を実現する事に8割の重きを置いており、見栄えにかける金やひまはありません。hi,hi。

20Wと、もうひとつの電力ですが、これもファン音が無いので愛用し、結局先に紹介したペケ球アンプに出る幕を与えませんでした。

<ピコ15用 QRPリニアアンプ??>
パワーが下がってきたところで、ぐっと小さな話を。

ピコ6の発売と同時にこれを入手し、コンパクトさには感心していました。但し出力は0.3Wです。これを前回紹介した2B94アンプにつないで、いきなり50Wに増幅して出たりして遊びました。

次にピコ15を買ったのですが、こちらはアンプがありません。そこでピコ15と同じサイズのリニアを作りました(左写真の左側)。

リニアといっても、僅か2Wです。大きさが大きさなので、中味の6割は電池。hi,hi。CB用のトランジスタを用い、電気的には気楽に、しかしスペースの狭さのため物理的には大変気を遣って作りました。hi,hi.

QRPのリニアです。hi,hi.

リニアの話が、とうとう2Wになってしまいました。hi,hi。
次は、いよいよ本格的QROとなります。

- つづく -




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