430MHz アップバーターのレストア記

<144MHzに同軸共振器のアップバーター>
初めて作ったトラフ共振器を搭載し、28MHzから上げていた430MHzアップバーターの1号機を、もう少し観良いものに置き換えようと、またスプリアス抑制の観点から50MHzから上げようと思って作った2号機でした。
作った当初、430MHzSSBには自作派ばかりが出ていたのですが、いつしか世の中が変わり、使わなくなって40年程経ちました。最後の動作確認は30年ほど前です。

  

写真左  改造前の430MHzアップバーター2号機
写真右  同、シャーシ裏

<手ごわい相手!>
ようやくまた棚から降ろして、まず局発をチェックしました。
発振していませんでした。どうも手ごわい相手のようです。hi.

発振段用電源部の、RD6Aのツェナー電圧が5.6V(電流を増やしてもダメ)だったので、これを6.2Vに上げてやると、発振しました。ツェナーの電圧が低下する?? ホンマかいな。
それとも、水晶のアクティビティや、コイルのQが低下したのかな?? 
安定発振のために電圧をさらに上げると、発振周波数が上がって合わせきれなくなりました。昔、そのために低目の電圧にしたのかなぁ。← 誰が?
発振器ひとつでこの状況、先が思いやられます。hi. 千里の道も一歩から~♪♪

<スプリアス対策>
これでようやく各部のチェックが出来るようになりましたが・・・。
問題はやはりスプリアスでした。1匹で済まない四六のガマ(?)の追い出しに追われました。
本業が台風の影響で繁忙となり、時々止まる動画の再生のように各部の整備と、ゴーストバスター(スプリアス対策)です。hi.

これまでは、スプリアス懸念のために、総真鍮製、6cm角×25cmの1/2λ同軸共振器を出力側に繋いでいました。電監での持込み検査もこれを使って受検し、無事合格しました。
今回、何とかアップバーター自体でスプリアスを押さえたいのですが、これは装置に組み込める大きさではありません。
他の方法で何とかする事にします。

  

写真左  1/2λ 同軸共振器
写真右  改造後の、380MHz局発出力

<スプリアス低減に効果があった対策>
・ まず、FETのゲート注入のミキサーをDBM+FETのゲート接地に替えると、スプリアスがぐっと減りました。
  (そう言えば、1号機はまじめに、トランジスタのシングルバランスドミキサーを組んでいたなぁ)
・ 次に、増幅のし過ぎが局発とドライバーユニットに1箇所ずつあり、これらを廃してトラフ共振器の2連(複同調?)に替えると、さらにスプリアスが減少しました。
・ 50MHzの入力部に共振器を入れ、配線の引き回しも、回り込みの少ない経路に変えました。
これで、取り敢えずQSOができる程度になりました。

  

写真左  380MHz 局発ユニット  第2、第3トラフは、同調のみにした。
写真右  ミキサー、ドライバーユニット  左端はDBM。 最終トラフは、同調のみに変更。

トラフの各ユニットには、シールド効果の向上のため、金属カバーをかぶせました。
(実は、ほこり除け?)
これで同調がわずかにずれる場合、逆に出力がわずかに増大する場合、共にあります。

<ファイナルユニットと、フィルター>
次にファイナルアンプのチューンをとってと。
出力側のフィルターですが、1/2λフィルターに代えて、良いLPFを自作する自信はありませんでした。
ちょっと待てよ。昔のバラクターダイオード方式の400MHzタクシー機から取外したHi-Qフィルターがあったぞ。3段の物を組み込み、オバケ退治の仕上げに利用しました。
これは金属くりぬきで内外全面銀メッキの高級品。固定コンデンサーなど焼けそうな部品が無く、同調はフラッパー式なので、アキレス腱はありません。 ^^)
但しこれ、よく切れる代わりにロスが2dB余りもある大食いでした。パワーダウンは辛抱、辛抱。

  

写真左  3段Hi-Qフィルター内部  段間の結合は、スロットのみ。
写真右  3段Hi-Qフィルターの通過特性

ここでファイナルアンプ使用時の出力のスペアナ測定なのですが、430MHzに使えるアッテネーターが無い!
(M結合式を、無理無理に使おうか・・・。)

そこで、430MHzでのスプリアス調査のため、抵抗直結のアッテネーターを作りました。
詳細は、「通過型抵抗直結式アッテネーター」にあります。
これで測定した結果を下に示します。近接、高調波とも、十分に抑えられました。
アップバーターのオバケ退治は、ひとまずできたようです。やれやれ。

  

写真左  レストアを完了した430MHzアップバーター  右奥は、Hi-Qフィルター。
写真右  アップバーター出力のスペアナ測定結果

<リニアアンプ>
4X150Aのリニアアンプは、電源のコネクタを少しだけ磨き、チューンを取って正常に動作しました。
但し、上記Hi-Qフィルター入り側に戻しており、このフィルターの発熱はあります。
アンプ本体の出力は80Wほどですが、UHFでプレート能率は低いので熱損失が多く、球はちょっとかわいそう・・・。この80Wも、Hi-Qフィルターや2個のリレーを通って出てくると、60Wです。
ぎょうさん、熱になりますね。 ^^;)

  

写真左  4X150A リニアアンプ
写真右  同、出力のスペアナ測定結果


- 後日談 -
<局発との再度の戦い?>

これでひとしきり使ってみたのですが、局発のQRHが気になってきました。スイッチオンから1~2kc動きました。380MHz(47.5MHz×2×2×2)の局発を何とか安定化させようと、以前の水晶のために発振回路に増設したCを外す、ツェナーダイオードを三端子レギュレーターに替える、それを更にシールドケースの外に出す、Trのエミッタ抵抗を大きくして電流を減らす等の対策を行いました。

祈る気持ちで、ドリフトの測定を行いましたが、起動後20分のドリフトが1KHz余り、その後1時間で160Hz程と、昔のHF用VFOのような状況でした。
水晶がイマイチなのか、原発段でオーバートーン発振と2逓倍を同時にやる厚かましい回路のせいか、判りませんでした。

原発を95MHzにしようかなどと考え込み、思い余って水晶メーカー(当アップバーターに使っているのは別メーカーの水晶)に、ドリフトの程度について聞いてみました。
真面目に相談を聞いてくれ(良心的なメーカーや!)、3ppm位のドリフトは、一般の水晶ではやむを得ないと。また、これを低減するには、TCXO等が必要との事でした。そうか、最近のリグはこれを搭載しているから安定なんや・・・。

リグの安定度をTCXOの精度にするためには、キャリア位は別として、基本的にリグ全体の周波数関係をその1個のクリスタルで制御する必要があります。昔、PLLに取り組んでいた頃に夢見た”ワンクリスタルコントロール”(当時は、PLLの中に既に複数の水晶があった。通常は、その後にさらにバンドクリスタル)は当然に必要なんやー。

何だかガックリの巻でした。最近のリグを使っている人は、そんな有難みを判っているかなぁ。
ちょっとむなしい気分になりました。hi.

せめてもの事に、オーバートーン発振と逓倍の分離を試みると、ドリフトが減少しました。
また、回路を変えなくても発振段のTrをPc0.8Wの缶型から、Pc0.2Wのレジンモールドに替えてもそれなりに効果がある事がわかり、これで辛抱する事にしました。
スイッチオン20分後のQRHが100Hz位です。
これでいいやい。私は、私の力で430MHzに出ている事に得心し(負け惜しみ)、アップバーターは送信開始の20分前にスイッチを入れようっと。

しかしその後、原発を95MHzに変えれば、スプリアスの一層の削減にもなると思い直し、結局95MHzの3倍オーバートーンの水晶を特注し、これに替えました。
私に出来る事は、これで精いっぱい。これで行く事にします。 ← 開き直りか?



前のページへ

Home Page