TS-520のノイズブランカーを転用してみる

HFトランシーバーを、キット(JK1XKPさんのKP6D リンクはこちら)を利用して製作するにあたり、ノイズブランカーを追加する事にしていました。
しかし前回6mトランシーバーに搭載したノイズブランカー(リンクはこちら)は、種々トライアルし、出来上がるのに3か月かかりました。
ノイズブランカーは、実績のある回路で製作しても、挿入する箇所での信号レベルや、トランス等の諸特性の違い等によって、うまく動作するとは限らず、私にとっては難度の高いアイテムです。
「また3か月のトライアルは、つらいなぁ~」と考え、以前オークションで入手したTS-520のノイズブランカーユニットを改造して転用してみる事にしました。少なくとも、最初のトライアルには使えるはずです。
TS-520は、このユニットが独立していたので、おあつらえ向きや! ←そんな、うまく行くんかぁ?

<ノイズブランカーの構成>
ノイズブランカーの構成の基本は普通、下図のようです。



ノイズアンプでしっかり増幅し、ブランキングパルスを十分発生させれば、それでノイズゲートのダイオードに逆バイアスをかけ、信号のノイズの部分を黙らせることが出来ます。
ルーフフィルターは、強力な近接信号によってノイズアンプが飽和する等によりブランキング出来なくなるのを防ぎます。

<改造のポイント>
① TS-520のIFは3MHz帯ですが、今回のトランシーバーでは12MHzです。
トランスはすべて12MHz用に巻き替え、または取り替えます。
② ルーフフィルターとしてTS-520では、3段の集中型IFTを使っています。
しかし、12MHzでは選択度を期待できません。

9MHzや10.7MHzであれば、帯域幅15kHzや20kHzのモノシリックのクリスタルフィルターがありますが、12MHzでは見当たりません。
そこで、後続のラダー型クリスタルフィルターのエレメントに使う水晶2個を使い、小さなラダー型フィルターを組んでみる事にします。
下の写真は周波数特性の一例です。素晴らしい特性とは言えず、またIFの周波数範囲(11.996~11.999MHz)と若干ずれているので少しロスがあるかもしれませんが、ともかくこれで行く事にします。



③ 前の6mトランシーバーのノイズブランカーの製作での知見を盛り込む事にします。

<ユニットの改造>
下は、転用ユニットの回路図です。
改造部を、オレンジ色または、オレンジのアンダーラインで示します。



① コイルは、巻きなおした物も、新たに10kのボビンを用いたものもあります。
② ルーフフィルターは、元の集中型IFTの2段目のスペースに組み入れました。
1段目、3段目IFTの中点に繋ぎ込んでいるのは、トライアルでロスが少なかったためです。
③ パルス発生器のQ5入力には、オレンジで示すダイオードを用いてバイアスをかけ、小さいノイズパルスでもブランキングパルスが得られるようにします。
また、ノイズゲートの4つのダイオードのうち2個はショートして、ブランキングパルスが多少弱くてもoffにできるようにしました。
④ それから、今回のトランシーバーの事情ですが、ミキサーからIFのクリスタルフィルターまでは送受信に兼用(信号の流れは逆ですが)しており、その中にノイズブランカーを挟むと、送信時にNGとなります。
そのため別に下図のようなリレーボードを作り、ノイズブランカーがoffの場合と送信時には、ノイズブランカーをバイパスするようにしました。
この方法に伴い、S11のNB Switchは使用せず、ジャンパー線でON側に繋いでおきます。



写真は、改造後のノイズブランカーです。



<調 整>
当局周辺の外来ノイズは最近、どのようなものがいつ出てくるか判らない、まるでゲリラの様になっているので、それをあてにして調整する事が出来なくなりました。
そのため、ノイズジェネレーター(リンクはこちら)を製作し、これを用いました。

まずマーカー発振器やSGの信号を受信して、出力レベルが最大になるよう、T1、T3、T4、T5を調整し、さらにD6入りの信号レベルをオシロで見て最大になるよう、T6、T7を調整します。

次に、Q5のコレクターを一時的にGNDに落とし、信号が消えることを確かめます(消えれば、ノイズゲートは正常)。

今度はノイズジェネレーターをアンテナ端子に繋ぎます。T4、T6、T7をゆっくり回し、
オシロで見て、D6入りのノイズパルスが最大となり、
Q5コレクターでブランキングパルスが最もよく生成され、
Sメーターを見てノイズによるSが最小になるよう、調整します。

D6入りのノイズパルスと、Q5コレクターのブランキングパルスの波形の例(時間軸は同じではありません)を下の写真に示します。

  

T4の最良点は、信号受信時の最良点と少し違いがありました。これは、信号受信時にノイズブランカーをバイパスした場合のSメーターと、ノイズブランカーを通した時のSがあまり違わない範囲で、ノイズが少なくなるよう調整します。

<ブランカ―の効果>
ブランキングパルスがよく出るように調整すると、ノイズブランカーの効果がはっきりわかるようになります。
ノイズジェネレーターを使ってS9のノイズが、ノイズブランカーを入れるとSメーターで最初の目盛以下、ほんのわずかしか振らない程に下がりました。

ノイズブランカーの挿入ロスは、当初Sメーターで1~2あったのですが、ルーフフィルターを前記回路図の様にT1とT3のタップに繋ぐようにした後は、殆ど無くなりました。

<あとがき>
TS-520のノイズブランカーを自作機に転用するというズボラなアイデアは、どうやらうまく行きました。ウチではノイズブランカーが必需品と思っているので、やれやれの気分です。
実際の色々なノイズでの効果を確かめにかかっており、「今日はノイズが出ていないかな」と、ノイズを忌み嫌うこれまでとは180度違うような気分でトランシーバーの電源を入れています。hi.


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