新スプリアス規格への対応記 - 続 ー
 
ハイパワー設備のスプリアス確認保証


昭和時代のトランシーバーと、真空管式のリニアアンプという組合せで落成検査を受け、小変更を伴いながら使っていました。
しかし、例え新スプリアス規格のトランシーバーでも、リニアアンプが旧スプリアス時代に検査を受けたままであれば、トランシーバー+リニアアンプの送信機全体として、新スプリアス規格への適合を確認しなければならないことになりました。

但し、コロナの流行により、移行期限は当分の間延期されました。

対応としては、次の2通りが考えられました。
1.JARDによるスプリアス確認保証を受ける (2020年7月1日より、200W超の送信機にも対応開始した)
  スプリアス確認保証可能の送信機や、リニアアンプのリストが提示されている。
  このリスト以外のリニアアンプの場合は、スプリアスの測定データの提出が必要。
  (JARDは、スペアナの較正年月の記入は要求していません)

  このリストには、私にも懐かしいFL-2100Bも加えられており、これで助かる人も多いと思います。
  しかしウチは、リニアが既に変更して真空管なども変わっており、リスト以外のアンプです。

2.総通局へ「スプリアス発射及び不要発射の強度確認届出書」を提出する
  測定データや、測定器の型番、較正年月の記入も必要

想定よりも、手ごわい内容でした。これは、頑張らなくては!

(JARDの「スプリアス確認保証の対象・手続き」によれば、測定は業者やJARDに委託することも出来るようです)

<総通への書類提出か、JARDのスプリアス保証認定か>
どちらにしても、スプリアス測定のデータ提出は避けて通れません。
情報検索すると、HF送信機でもスプリアスの測定は1GHzまで必要とあります。何と!

総務省の、スプリアス発射及び不要発射の強度確認届出書を見ると、測定に用いた機器の型番、較正年月その他の記入まであります。
私の測定器は、スペアナの較正(製造時)が4年前、サンプリングに使うカップラーやアッテネーターは自作で、型番どころではありません。
また、これら自作品は、せいぜい200MHzまでを目標にするものです。

総通への書類提出は私にはハードルが高く思われ、上記のJARDのスプリアス確認保証を選ぶ事にしました。

<それでも難題が・・・>
免許された全周波数帯で、全電波形式について測定するとなると、ウチのリニアは4バンドで、6つの電波形式ですから、掛け算で24ケースで、それぞれ一式の測定が必要となります。えーっ?!

まず問合せをし、スプリアス測定方法の資料をメールでJARD保証事業センターへ請求しました(これ、順番が逆でした)。

前記の問題を尋ねたところ、JARDはそんな要求はしませんでした。ホッとしました。
これでひとつはヤレヤレだったのですが、次の事が判りました。

① スプリアス領域の測定は、CWの場合、キーヤーの最高速で送信し、出力をスペアナのmax hold機能で測定しなければならない。
② これは、1GHzまで特性がフラットなサンプリング装置で、信号をサンプリングしなければならない。
  自作のサンプリング装置の場合は、その周波数特性を測定して提出しなければならない。
  (NanoVNAを使って、測定結果を提出した人も居る由)
③ 帯域外領域の測定は(貰った「アマチュア無線機の測定方法例」によると)
  連続波で、CWやSSBの場合は20kHzスパンの測定ですが、スペアナのRBWは10Hzにしています。
  (100Hzで良いと思ったのですが・・・。)

上記①のmax holdは、知らない機能だったのですが、スペアナの取説をよく見て、使い方が判りました。(スペアナ初心者 ^^;)

同じく②ですが、500Wが扱え、しかも1GHzまで周波数特性がフラットなサンプラー(世の中には、そのようなものがあるのかなぁ)を作る腕は、私にはありません。
そこで、高い周波数では基本波に比べて、多少とも減衰量が減るようなカップラーを使えば、測定値が実際のスプリアス強度より高く出るので、安全サイドの誤差として許してもらえるのではないかと思いました。
JARDに軽く質問したところでは、「OKです」とまでは言って貰えなかったのですが、当方として出来る精一杯ですので、これでやることに決めました。

(サンプラーの周波数特性でノーマライズする方法があるのかもしれない)

自作の色々なカップラーを、スペアナのトラジェネを使って1GHzまで測定しました。
結果、3段M結合(20dB親カップラー → 20dB子カップラー → 10dB孫カップラー)の50dBカップラーが、そのような特性であることが判ったので、これを使います。

自作カップラーへのリンク

減衰量(結合度)は、HF領域から1GHzにかけて、17dBほど変化します。^^;)

そこで、低域(測定は、9kHzまで要求されます)が特にフラットな、1段M結合の30dBカップラー100MHz以下を測定する事にします。
減衰量が足りないので、自作のシリアルアッテネーターで、25dBさらに減衰させます。

これら、3段50dBカップラー、30dBカップラー、シリアルアッテネーターとも、周波数特性の測定結果をスプリアスデータに添付しました。

上記③、RBWが10Hzでは500W出力で1分以上連続波を出さなければならないことが判りました。
こんな送信は、やったことがありません。(球が焼けたら困ります)
精一杯の事として、30Hzでの測定とします。これなら、20秒くらいの送信で済みます。
(ワンスィープで画面表示後、表示をフリーズさせてから送信停止し、画面を保存しました。)

<測定>
測定は、下のような接続で行いました。
(減衰器は、100MHzスパンの測定で使いました。1GHzスパンは50dBカップラなので減衰器は不要だった)



結局、1送信機あたり、帯域外領域の測定、スプリアス領域のうち100MHzまでの測定、1GHzスパンの測定と、3つの測定データをとりました。
エキサイタが2装置有り、測定は2送信機分。ちょっと長い連続波や、念のための再測定、失敗によるやり直しなど、ちょっときつい送信を繰り返し、リニアアンプは大分熱くなりました。hi.

<保証願いを提出>
スプリアス測定結果をカップラーや減衰器の測定データと共にファイルにまとめ(書式は自由)、スプリアス確認保証願、スプリアス発射及び不要発射の強度確認届出書(JARD様式)、保証料の振込記録とともに、メールでJARDに送りました。

すぐにJARDから書類受取の連絡メールがあり、保証料の入金確認後処理する旨と、保証書の発行が隔週金曜日との旨が書かれていました。

<保証通知書が来た!>
書類送付から2週間余りで、「スプリアス確認保証通知書」が、送られてきました。
送信機の型式又は名称の欄には、「FTDX3000+リニアアンプ」などと、書かれていました。自作も3-500も書かれていない”リニアアンプ”には何だか、拍子抜けの気分ですが、これでようやく、500W設備の新スプリアス規格対応が終わりました。

やれやれ・・・。

<蛇 足>
今回の保証認定で、500Wのバンドを追加するなどが出来ないものかと、当初思いましたが、「免許されていない設備のスプリアス確認保証は出来ない」とあり、夢と消えました。hi.




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