50MHz ツインビームリニアアンプのレストア記

<眠っていたリニアをピコ6の相棒に>
ピコ6のスプリアスを調査すると、高調波がそれほどなく、近接のスプリアスも-70dB近く落ちていました。この事から、この0.3Wの出力を繋いで、これまでラックの下段で眠っていた、ツインビーム管2B94の50MHzリニアを働かせ、本気で50Wを出すのもアリだと気がつきました(以前は、いたずらだった)。アンテナ切替器にも、もう1接点分あるし。
1975年、電監の落成検査に合格したこのリニアも、その後に2B94をパラレルにして見事に失敗し、2本目を取り外しただけでシャーシやソケットの取り付け金具には大きな穴がそのまま、シールド板は無造作に切り縮められ、コイルも仮の細い電線、実に不細工な姿になっていました。

 

レストア前のツインビームリニアアンプ

穴とシールド板をうまく元の形に戻すアイデアが無く、また面倒そうなので手をつけていませんでした。
整備するか、そのままにしておくか、分解するか(部品の置き場所に困る)考えた結果、本気使いに相応しい形に整備する事にしました。

<改造と整備>
シャーシの大きな穴をふさぎ、シールド板は取付可能な形状を工夫し継ぎ足して元の大きさに復元し、コイルも線が太めのものを再製作して取り替える事にします。
元は40年以上前の作品です。パネルは文字が手書き。グリッドバイアス、スクリーングリッド電圧の設定ツマミまで前面に出ていました。
触るとこわいバイアスVRはパネル面から撤去、文字もレタリングに変える事にし、パネルの改修も伴う事になります。
まずパネルを取り外し、主要部を分解しました。

    

写真左  ファイナル部を分解したリニアアンプ
写真右  穴埋め、再塗装を終えたパネル

パネルは、文字シールを削りとり、スイッチの穴を1個埋めなければならなくなりました。
穴埋めは、アルミ板のたたき込みを試してみました。大成功。
たたき込みについては、「たたき込みによるパネルの穴ふさぎ法」をご参照下さい。
再塗装すると結構綺麗に出来上がりました。しめしめ。

ここで、インスタントレタリングで文字を入れ、透明ラッカーを吹き付けてパネルが出来上がりと思ったら・・・。
この日は風が強く、どこかから吹かれてきたチリが塗りたてのパネルの上へ。軽く指では取れず、つまもうと思ったら、ラッカーでふやけた塗装がこすれて地金の色が。
しまったと思い、その部分だけ塗料をスプレーすると、今度はレタリングにまでスプレーが飛び、再レタリング。こんな事を2回程繰り返し、折角やりかえたパネルが、微妙な出来に。 まあ、いいか・・・。

再現部のシールド板は、取付け用のツバ(ネジしろ)が大穴のふさぎ板とぶつかりそうだったのですが、この部分だけツバを他と逆側にしてクリア。
コイルは原型を思い起し、IV線を振動しにくいように被覆のまま巻いて再現しました。紅白の楽しい組み合わせになりました。hi.
これまで無かった入力アッテネーターを設け、0.3W入力でも10Wでも、切り替えてつなげるように改造。これは難なく成功。  これでテストにかかったのですが・・・。



   組み立てを終わったツインビームリニアアンプ

<テストと、トライアル>
バイアスVRを調整していると、突然プレート電流が振り切れに。密閉型のVRがガリオームになっていたのでした。
取替えて、やおらドライブをかけると、Maxパワーに近づいたところでスクリーングリッド用安定化電源の定電圧放電管が消えそうに。オーバードライブでは、消えてしまいました。

スクリーン電圧用のトランス巻き線は無く、プレート用から抵抗で落としていたのですが、電流が増えると電圧降下が200Vを超えるのでした。
これが迷路の入り口となり、抵抗にパラに抵抗を取り付けて電圧低下を減らしたり、今度はスタンバイ時に安定化電源の入り電圧が600Vにもなったり、トランスのタップから新たに整流して500V電源を作るために他の装置から平滑用ケミコンを取り出したり、新たにブリーダー抵抗をつけたり、さんざの再改造を行いました。
ケミコンの耐圧が不足する箇所には、330V10μFと50V100μFのケミコンを直列につないだりしました。

そして結局、電圧降下用の抵抗、その抵抗の出口のケミコン、ブリーダー抵抗の全てを、また撤去する事に・・・。
(これで、安定化電源の6BM8のプレート電圧は、500V。)
C電源のケミコンを放電させようとグリッドをアースに数回ショートさせたら、電源をまだ切っておらずプレート電流が振り切れたり(自己嫌悪に大分へこみました。hi)、抵抗の最適値を見つけるために繋いでいたクリップコードが外れて真空管ソケットの電極と接触し、500Vの激しいスパークがおきたり、心臓に悪いサプライズ(?)もありました。



     作動中のリニアアンプ内部

ようやくトライアルから抜け出して試運転し、キーイングして各部の電圧に大きな変動が無い事を確かめた翌日、改めて再確認すると、今度はキーダウンでスクリーン電圧が100V以上低下しました。えーっ! まさかと思いつつデジタルテスターを昨日のアナログテスターに替えたら、正常。
タンクコイルの横を通っていたテストリードから、デジタルテスターIが起こったのでした。あ~あ。
真空管の装置でこれだけ失敗やトライアルをやった事は無かったなぁ。腕の低下を実感(しみじみ)。いや、久しぶりの真空管のせいや(° ° 。 。)

  

写真左  レストアを終わったツインビームリニアアンプ
写真右  入力ピコ6の場合の、スペアナデータ

こうして、ツインビーム式6mリニアアンプの整備が終わったのでした。やれやれ。MAX出力は47Wでした。
リニアの出力のままで、スプリアスは-60dB程に落ちています。外付けのLPFを通すと、-70dB以下になり、新スプリアス規格に十分かないました。

手こずりましたが、全て手持ちの部品だけを使い、経済的プロジェクトでした。^^)
被覆付きのタンクコイルは念のため、試しにエナメル線に取替えて比較しましたが、電気的には特段の違いは見つかりませんでした。


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