摺動接点式パドルの試作


<接点を摺動させる?>
昔電話切替えや送信機に良く使われたシーメンスキーという切り替えスイッチは、接点金物が取り付けられたアーム同士がしなり、接点をこすり合わせるように摺動して、磨き、或いは自己洗浄という効果が得られるため、接触不良になりにくいと言われました。

パドルやキーも、接点が命の装置です。これも、接点を”摺動”させて、自己洗浄効果を得られないものかと考えました。

<逃げる接点>
やはりしなりがポイントなので、プリント基板をブレードとして使う事にします。
ここで、接触点を簡単パドルの中央ステムのように固定ではなく、やはりプリント基板に設けて、打鍵時に接点が逃げるように摺動するという方式を思いつきました。
下の略図を見て下さい。2枚のブレードの右端に接点があります。
上のブレードを押し下げるとしなって接点が接触し、さらに押し下げると、下のブレードもしなり、接点が左へ動きます。
これや!



<摺動接点式パドル>
これをパドルに応用し、出来たのが下の写真のシングルレバーのパドルです。
当初、両端のブレードを使ってダブルレバーのパドルとし、中央のブレードを共通の接点にしたのですが、レバーを押しすぎると中央のブレードが他方のレバーにも接触してしまい、NGでした。
そこで下の写真のように、中央のブレードを動かす、シングルレバー方式としました。
ベースとブレードの略図(恐縮ですが手描きです)を、pdfにしました。 → リンクはこちら


出来上がった、摺動接点式パドル  ベースとサポートは23mm厚の木製


写真左 パドル背面   写真中 パドル裏面    写真右  メカ部にカバーをかぶせたところ

<トライアルのポイント>
当初、かまぼこ板をベースにし、パドル5号機と同じブレードを流用して仮組し、トライアルしました。
それを通じて本機に取り入れたポイントが3つあります。

1.両側(長点と短点用)ブレードの硬さ
当初、これらには幅7mmの片面基板(パドル4号機と同じ)1枚ずつを使いました。
するとしなりが大きく、はっきりと判るくらい接点が摺動しました。
オシロで見ると、接点を打った時に出力にノイズが見られました。

摺動が多すぎると考え、これらブレードをもう少し硬めにするため、幅は12mmとし、2枚をエポキシで貼りあわせました。
銅箔の無い面同士を貼り合わせ、固まってから穴を開けます。

略図で2.8φとある部分の穴には、M3のネジをねじ込みます。
但し、貼り合わせ部分にM3ネジをねじ込むのはさすがに硬すぎるので、タップを立てました。
3.2φとある穴には、ネジを通して締めます。
貼り合わせ部の3.2Φ穴は、長いビスが貫通するので、互いに導通しないよう、銅箔面にザグリを入れます。

このブレードに替えたら、タッチが前よりしっかりし、摺動は少なく、オシロで見る出力のノイズは極く少なくなりました。

2.接点の銅板
中央のブレードは両面基板として、当初、接点部分に手持ちのリン青銅板を半田付けしていました。
全周半田づけしたため、銅板に焼け色が付き、やすりとペーパーで仕上げていました。表面に僅かながら凹凸はあったと思います。
前項のトライアルで少し残った出力ノイズを無くすため、庄子OMのパドルのように、表面平滑な銅板を巻き付けようと考えました。
(庄子OMが0.1mm厚の銅板を送って下さいました。OMに感謝!)

上の写真の通りです。
ブレードに一周、良く引きつけながら巻き付け、折り返しの所を1mm程重ねて、その両端をブレードに控えめに半田付けしました。
これで、オシロでノイズが見つからなくなりました。

なお、銅板の相手側の接点はM3のトラスビス(ステンレス)です。ビスの頭が内向きになるように、前項のブレードにねじ込み、貫通化粧ナットと蝶ネジで挟んで締め付けました。

3.滑りの防止策
パドルが軽いので、手で押さえるか、何かで固定しなければ、安定しません。
今回は、手許にあった25mmφ×6mmHの磁石3個をベース裏に貼り付けました。これでスチールデスクにしっかり貼り付きます。
デスクに傷が付かないよう、磁石の下に、1mm厚のゴムシートを貼り付けました。

<打ち心地は>
タッチはややソフトですが、コンタクト時の手応えもあります。しかし、カツカツとしたものではありません。
ちょっと不思議な感じがあります。hi。
ゆっくりレバーを押してゆくと、僅かですが接点が動くのが判ります。
これできれいな出力が保たれ、接点の自浄(?)作用が得られてメンテが少なく済めば目標達成です。

期待を込めて実戦使用を始めています。

なお、中央のブレードの幅が10mmですが、レバーの動きは硬い目です。
幅を7mmにすると、レバーが軽くなります。(簡単パドルの4号機、5号機と同じ)
好みに応じて変えると良いと思います。 私は7mmに替え、打ちやすくなりました。
両端のブレードは、変えません。

<またフッと>
のこ刃などの、しなるブレードを用いるパドルやキーは、固定の接点を打っていても、摺動するような気がしてきました。
下の図は、接点に触れた瞬間と、レバーを押し終えた時など、ブレードのしなりが弱い時と強い時の、ブレードの状態を示します。
どちらも、支点と接点は同じですが、ブレードに沿ったその間の距離は、異なります。つまり、接点が摺動する事になります。
という事は、のこ刃のパドルは摺動接点式という事に・・・。



− 蛇 足 −
このパドルのついでに、木製ストレートキーも製作しました。
下にリンクを貼りました。

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