作りやすさと実用性、さらに省エネを重視した
DJキーヤー4A型





<シンプルなキーヤー>
思いがけず、あるハムクラブでキーヤーを題材に、製作教室のお手伝いをさせてもらう事になりました。
製作に関しては初心者もベテランもおられる由で、どなたでも取り組める、作りやすくシンプルなものを目指すことにします。
今回新たに設計し、省けるものは省いたシンプルな構成、それでも実用にも耐えるものとします。
まず回路が簡単、小型で部品も少なくして、作りやすくします。ただし、メッセージメモリーも搭載します。また、省エネを必須条件とします。
さて、どんなキーヤーができるやろ。


<設計の方針>
上記の考え方から、次の事を設計要件としました。
1.回路も操作も簡単な事。
2.キーイングスピードは、相当な低速から上級レベルの高速までツマミで変えられる
3.簡素ながら、2チャンネルのメッセージメモリー(不揮発)を搭載する
4.アイアンビックキーヤーの、モードAとモードBいずれにも切り替えられる
  また、エレバグキーモードにも切り替えられる
5.操作しない時はスイッチONでも殆ど電流を消費しない省エネ型とする。(当HP紹介のエレバグキーの方式を踏襲)
  単4電池2本で、電源を切らなくても相当期間使える。

私のキーヤー開発の経過を考えると原点回帰の面もあり、その頃のタイプの改良版にも見えるので、DJキーヤー4A型と名付けました。

<回路と構成>
PICマイコンを用います。中でも小さな8ピンのPIC12LF1822にします。
これまで私のキーヤーでは18ピンや28ピンのPICを使っていたのですが、それらから10ピン或いは20ピンの削減!! 省資源かな??
このマイコンは、1.8~3.6Vの電源で使え、低消費電力が特徴です。(5V電源では使えません。)

DJキーヤー4A型の回路は、下のようです。



図中央のマイコン(のソフトウェア)が、殆どの操作を受け持ちます。
その8本の足(ピン)に正負の電源、DashとDotのパドル、出力とスピーカーがつながり、残る2本を、スピード調節のVRとメモリーのスイッチに宛てます。
するとメモリーは1チャンネル・・・、では寂しいので、メモリーのスイッチを、長点パドルと一緒に押せば、第2のチャンネルが起動するようにしました。
二つを手で同時に押すのはちょっと難しそうなので、双方からダイオードで二つ目のメモリースイッチに繋ぎ、電気的に実現しました。
スピード調節用のVRの中点はPICの残った最後のIOピンにつなぐのですが、VRの一端にはプラス電圧をかける必要があります。これを電源につないでしまうと、常時30μA程電流を消費するので、面白くありません。
そこで、このIOピンは通常L出力にしておき、スピード計測する時に一瞬Hを出力してC2を充電し、直後にA/Dコンバーターに切替えてVR中点の電圧を測ることにしました。
(符号を一つ出すたびに、一瞬出力 → 入力に切替え → 電圧測定 → また出力に切替え → L出力 の手順をやります。hi)
メッセージメモリーは、マイコン内蔵のEEPROMに記録し、電源を切っても消える事はありません。

C7は、通常は入れる必要はありません。次項の部品実装図にも設置場所を示していますが、必要なケースについては<使用感>で説明します。

<脱 線>
ここで、ちょっと脱線を。
キーヤーのタイムベースにCR発振器を用いた場合、スピード設定はVRの抵抗値を直接発振回路に組込む方式が多いと思います。
この場合、抵抗値が大きいと発振周波数、つまりスピードが遅く、抵抗値が小さいとスピードが速くなります。
つまり、抵抗値とスピードは逆数の関係です。
抵抗値がVRの回転に対して直線的に変わる場合、スピードは双曲線の形となり、高速の場合、少しの設定の違いで大きく変化してしまいます。
私はこれを避けるため、VRの設定値(つまり読みとる電圧)の逆数を計算し、それをスピード設定の変数とする方法を採用しています。
つまり、割り算。長点や短点を1つ出すたびに、割り算が行われています。hi.
これで、VRの回転に対してスピード(wpmなど)の変化が直線に近づきます。

しかし、電圧がゼロや非常に小さい値になると、割り算が激しくオーバーフローするので、読みとった電圧に、小さい値を足し算しています。
以上、種明かしでした。

<製 作>
まず、基板を用意します。35mm×45mmのサイズです。プリントパターンのpdfファイル(TNX JA3CAY 武田さん)は、こちら
(ブラウザで戻って下さい)
回路は簡単なので、試作基板は蛇の目基板を用いて作成しました。

下は、部品実装図です。(TNX JA3CAY 武田さん)



基板への部品実装にあたって、PICマイコンには必ずICソケットを用いて下さい。そして、最初の電源投入の直前に、ソケットに差し込みます。
FETの2N7000は、基板上の部品の最後に実装します。
板外との接続端子には、ピンヘッダーを用い、直接電線をはんだ付けします。
電源、キーヤー出力と、二つのPSW用には、3ピンヘッダーの真ん中のピンを抜き取ります。
パドルの端子は3ピンヘッダーを用いても、5ピンのL型ヘッダーの両端のピン1本ずつを真直ぐに伸ばしても、OKです。
実装図では、2種類の接続方法でパドルにつなぐ形を示しています。

VR1とVR2をスイッチ付きにし、それぞれSW1とSW2に充てると、パネル面を簡素化できます。
PSW1とPSW2は、キーヤーの上面に取付けると、押しやすくなります。

製作要領書を作成しました。 リンクはこちら (ブラウザで戻って下さい)
基板上と、基板外を含めた部品リスト(ご参考用)も作成しました。 リンクはこちら  (ブラウザで戻って下さい)
調達先の例も挙げていますが、状況変化していた場合等は、ご勘弁下さい。

ケースには、シンプルなタカチのSW-100Sを用いました。
ケースの穴あけの展開図(例)を作成しました。 リンクはこちら
画面表示では僅かの誤差が出ます。100%倍率で印刷してご利用ください。
穴の径、間隔は、部品現物と照合し、穴あけ前に確認してください。

<各動作モードについて>
動作モードは、余り頻繁に替えるものではないので、切替えには裏コマンドを用います。
マイコンの初期設定は、アイアンビックのモードAです。
いずれかのPSWを押しながら電源を投入すると、スピーカーが”B”とビープし、モードBに変わります。
もう一度やると、”EB”とビープし、エレバグモードに変わります。
さらにもう一度やると、”A”とビープしてモードAに戻り、以降、順次切り替わります。
なお、動作モードの設定は、電源を切っても保存され、次に設定変更するまで変わりません。

エレバグモードは、エレキーの手軽さで、バグキー風の信号が出せるものです。下のページをご参照ください。

エレバグキーって何?

パドルは、ダブルレバーでもシングルレバーでもOKです。ダブルレバーを両押すると、後で押した方に切り替わります。(後出しじゃんけんが勝つ??)

プッシュスイッチ(どれでも良い)を2秒くらい押すと、キーヤーがR、BTとビープします。これで、メモリーの記録モードとなります。以前の記録も、この時点で消されます。
そうしたら、必要なメッセージを打ち込みます。メッセージは、アイアンビックモードで記録されます。打ち込みが終わったら、プッシュスイッチを押します。すると、キーヤーはARを出力して、記録を終了します。
記録されたメッセージは、不揮発メモリーに保存されます。
もし、BTが出力された後、何も打ち込まずにプッシュスイッチを押した場合、元の記録がキャンセルされただけで終わります。

いずれのプッシュスイッチも全く同じ機能で、異なるチャンネルで動作しています。
メッセージを送信するには、プッシュスイッチを短く押すだけです。1秒以上押すと、記録が始まります。^^;)
途中でメッセージを終わらせたい場合は、プッシュスイッチか、長点パドルを押します。

<使用感>
キーイングスピードは、1分間20字ほどから、100字以上の高速まで可変出来ました。
アイアンビックモードでは、私の場合、最後の短点が一つ足りなくなる事が時々あるので、これを防ぐためモードBが使いやすく感じます。
エレバグモードは私の通常のモードで、従来のエレバグキーと同様に動作します。ただし、メッセージメモリーには、エレバグモードで打ち込んでも、アイアンビックモードで記録・再生されます(その方が良いのかも。hi)。
え? エレキーのCQだと思って呼んだのに、バグキーのような応答があった??

メッセージメモリーの容量は長大なものではありませんが、CQ程度の電文を私が記録した場合、満杯になった事はありません。^^)

なお、電源スイッチSW1にノイズが多いものを使用した場合、電源を切る際に一瞬キーヤー出力が出る事が判りました。
この場合、回路図と部品実装図に示す、C7、10μFのケミコンを実装して下さい。

<パドル>
冒頭の写真で、DJキーヤーと一緒に写る小型のパドルは、自作の木製パドルです。小型で壊れにくく、持ち運びに便利ですが、工作机で場所を取らないので、最近この種のパドルをDJキーヤーと共に愛用しています。 リンクは
こちら

<頒 布>
DJキーヤー用の基板や、プログラミング済みのPICマイコンまたは焼き込み用のhexファイルをご希望の方は、下のボタンを押して、E-mailでご連絡下さい。

 一個(本)買いしにくい下記部品も、併せてお分けします。ご相談ください。
 1N4148ダイオード (代替品の1SS17になります)
 100kΩ 抵抗
 5.1kΩ 抵抗 (代替の4.7kΩになります)
 0.01uF(103) セラミックコンデンサー

基板上の部品全部を揃えた、
基板キットもあります。


写真左から、DJキーヤー用PICマイコン、基板半田面、基板部品面


基板キットの内容
パドル入力用のL型ピンヘッダーは、ストレート型に変更しました。

<オールインワン キーヤー>
JA7BWV庄子OMが、木製ベースの電鍵の中にDJキーヤーを組み込んだ、FBなキーヤーを作成され、写真を送ってこられました。
電鍵は、内蔵のスイッチでキーヤー用パドルにも直結の複式電鍵にも切り替えられる、オールインワンの素晴しいものです。
初めて目にするスタイルに、ビックリ。

詳細は、庄子OMのHP(リンクはこちら)をご参照下さい。

  

写真左  庄子OMのオールインワンキーヤー
写真右  オールインワンキーヤーの内部

<DJキーヤー 高耐圧バージョン>
英国のG4BMH、Nickさんがエレバグキーを求めて当DJキーヤーのページに到達、自動翻訳を駆使して読み、基板キット2組の頒布を申し込まれました。驚きました。
1組は回路図通りのDJキーヤー、もう1組は真空管送信機用との事。
彼の真空管TXではキーにかかるのが、約100Vのマイナス電圧、及び300V近くのプラス電圧(電流も100mA)の両方がある由でした。
結局、フォトリレーのTLP3549(600V、0.6A、プラス・マイナス両方に対応)を使う事にされました。
キーヤー出力用の2N7000を外し、PICマイコンの出力用RA2端子から、270Ωの抵抗を介してTLP3549内部のLEDに5mAの電流を直接供給です。これでフォトリレーの出力は、キーヤーと絶縁され、プラス電圧にもマイナスにも600V耐圧、600mAの容量を持つキーヤーとなります。
DJキーヤー高耐圧バージョンです。出力コネクタも誤使用防止のために他と違うものを使った由。

FBなケースに奇麗に組み込んで完成され、使用開始されています。
この方法は、真空管リグのキーイングの問題を抱えておられる方の参考になると思います。

  

写真左  G4BMH NickのDJキーヤー  上がスタンダード、下が高耐圧バージョン
写真右  高耐圧バージョンの内部  キーヤー基板の上の小さな基板がフォトリレー部



プログラミング済みのPICマイコンまたは焼き込み用のhexファイルをご希望の方は、下のボタンを押して、E-mailでご連絡下さい。
個人的利用の範囲で頒布します。また、リバースエンジニアリングはお断りします。
(hexファイルのご提供は、事情により取りやめました。)


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