エレバグキーの歴史

’60年代半ば、OMがシャックで使っておられたバグキーを見た時の印象は鮮烈でした。
パタパタと棹が振動し、軽やかに符号を打ち出す仕組みに、目も釘付けになりました。符号も速くて綺麗。いいなぁ。
とは言っても当時の私には値段が高くてとてもとても。CWもまだ超初心者だし・・・。これは憧れになりました。

そのうちエレキーを作って使い始めました。パドルは金鋸の刃を2枚貼り合わせていました。
TTL(トランジスタベース)を並べて作った3号機を使っていた時、これをバグキーのように長点パドルから直接に出力も出来るように簡単な改造をしました。電子版のバグキーです。hi.
早速これを試し打ちしてみると、”トツー”と打ちたい所が、スペースが足りずに”トルー”とか、ひどい時にはスペースがゼロで”ツー”と。
電文を打ってみても、びっこをひいているような不揃いな符号。
これをOMのように打つのはとても無理だー。
ひとたび浮かび上がった夢がズブズブと沈むようでした。そして月日が流れ・・・。

エレバグキー誕生

夢を実現するためには、(練習ではなく、^^;)長短点を出力した後に各々短点1個分のスペースを確保する(今では、「オートスペーシング」と呼ばれています)機構を作ればよいと考え、その方法を考え始めました。ある日、通勤バスに乗っていた時に、上記TTLのエレキーの、長短点メモリーをリセットする回路を利用するなどで、これが実現できると思いつき、回路の増設など実験を始めました。大成功! 
すぐに使えました。短点が自動、長点が手動、符号間のスペースが確保される、聞き取りやすい符号を打つことが出来ました。

エレバグキーと名付け、これを使ってオンエアを始めました。交信相手からは、「一体どんなキーですか?」、「縦ぶれキーかとダマされた」、「エレバグキー? 知りませんが」(そりゃ、そうだ!)などと言われました。こんなもの、他に聞いたことがありませんでした。現物を見に来られたローカル局もおられました。hi. 1986年でした。

  
写真左 初代エレバグキー  写真右 内部の様子(基板は2階建て)

C-MOS版エレバグキー

真空管リグを使っていたこの頃、キーヤーのGNDと、リグのGNDの電位が異なり、別に電源も必要でした。CMOS(FETベース)なら省電力で、電池で動かせる。そこで一念発起、1枚基板、CMOS、電池内蔵、スクイズキー(アイアンビック)、モニタースピーカーもついたエレバグキーを設計し、完成させました。2代目です。
これはとても省電力で、休止時の電流はほぼゼロ、電源ラインに直列にLEDを入れると、出力のたびにピカピカ光りました。また、CMOSのおかげで電波の回り込みも起こらず、とても実用的。その後も長い間愛用しました。
これは是非世に問いたい(大げさ)と、CQ誌に投稿し、掲載されました。1987年でした。多くの反響がありました。

  

写真左 2代目エレバグキー   写真右 内部の状況

このキーヤーは、私の単身赴任先にもついて来て、多くの局との交信に使いました。

マイコン版エレバグキー

日本橋で、黎明期のマイコン8035を搭載したマイコンボードが600円で売られているのを見て、早速購入しました。600円のコンピューターなんて、当時私には考えられませんでした。

これでもエレバグキーが作れるんでは? 8035のマニュアルを取り寄せ、Excelを利用してプログラムやhexファイルを書き、エレバグキー(もちろん、普通のエレキーのモードもある)をやってみました。大成功。
私にとりこのキーヤーは画期的で、プログラムはその後のマイコン版エレバグキーの原点になりました。

これは’96年のCQ誌に掲載され、プログラムやROMの提供要請が入って、娘から「またファンレターが来た」と言われました。

PIC版エレバグキー

外地へ単身赴任の頃、米国製のPK-3という超小型のエレキーICの記事を見て、早速米国のメーカーから買って、タバコ大のケースに組み込みました。非常に良く出来たキーヤーマイコンでしたが、当然ながらエレバグはありませんでした。
これを手本にして、PICマイコンを使い、エレバグキーを作ってみることにしました。

当時A/Dコンバーターを搭載したマイコンは高価でしたが、PICに手慣れた現地ハムのFredさんから、タイマー機能を使ってVRの抵抗値を測定する手法を教えてもらい、それでスピードをコントロールしました。
これはうまく行き、小型のエレバグ+アイアンビックキーヤーを幾つか作って、自動CQ搭載のバージョン(コールサインは焼き込み。^^;)をプレゼントに使ったり、製作ボランティアもしました。2000年代初頭でした。日本人ハム仲間から私は”エレキーの島津さん”と呼ばれるようになりました。
(どうせだったら、”エレバグキーの島津”と呼んでくれー)
下の写真は、この時期に作ったPIC版エレバグキー(上段左から2つ目は、PK-3使用)です。



メッセージメモリー付きエレバグキー

前記のPK-3は、入力の文字を瞬時に解読し、文字情報として記録/再生するメッセージメモリーを搭載していました。スゴイ!
その代わり、和文の”オ”など一部は、内部コマンドに使われている由で、扱われませんでした。(メーカーは、DX版として、使える物を後日提供してくれました。親切だなぁ~)
しかし、どんな符号でも記録/再生するキーヤーが欲しいと考え、符号を長点、短点、スペースに分類して記録する、1チャンネルのメッセージメモリーを搭載したキーヤーを製作し、エレバグキー4型と名付けました。(これに自動CQを加えた5型も作りました。)
これにもエレバグと、アイアンビックモードがありましたが、長点は長くても短くても短点の3倍の長さとして再生されました。つまり、エレバグモードで記録しても、アイアンビック同様に再生されました。
ともかくこれは、メッセージメモリー付きのエレバグキーなので、従来より踏み出した記念碑(大げさ!)と言えます。hi.
上の写真で、小さなプッシュスイッチが1個上に出たものがありますが、これが4型です。前記のFredさんがこれを気に入り、DJキーヤーと名付けて基板を数枚作ってくれました(DJは、現地での私のコールサインのサフィックスです)。ハムは横のつながりが出来て、いいですね。

エレバグモードのメッセージメモリー

エレバグの長点を長さ情報と共に記録するには、PIC内蔵のメモリー(256バイト)では足らず、相当に大きなサイズのメモリー(EEPROM)を使う必要があります。また、小さい情報で済む短点やスペースも合せて扱う必要があり、プログラムは複雑化します。
プログラムが複雑化してもPICの容量は足りそうでしたが、メモリーは外付けで64k(6万余り)バイトのEEPROMを使う事にしました。桁がいくつも大きくなり、”有り余る”容量です。hi.
64kメモリーの安さには驚きましたが、書き込んだ内容を確認する手段がありませんでした。^^;)
案の定暗中模索となり、嫌気がさしてしばらく放ってありました。hi.
しかし気を取り直して種々確認するうち、異常動作にも法則性がある事に気づき、それを糸口にプログラムを修正して、正常動作にこぎつけました。
エレバグモードのメッセージメモリーキーヤーの誕生です。2002年の終わりの頃でした。エレバグキー6型です。

字間、語間のスペースも、打ち込んだ時の長さで記録/再生します。
すぐにオンエアに投入し、メモリーからちょっと風変わりなCQなど(やりすぎ!)出しながら利用しました。

これは画期的だったので、CQ誌に投稿し、2003年の5月号に掲載されました。
全国から問い合わせや、PICマイコン、hexファイルの提供依頼を受けました。

末期がんで闘病中だが、エレバグキーを是非手にしたい、アフガンへNPO活動で行くが、持って行きたいなどの声も寄せられ、ジーンとしました。

  

写真左 2chメッセージメモリーのエレバグキー  写真右 内部の状況
先の、PIC版エレバグキーの写真前列にも写っています。

4ch化と、CWレコーダー

メモリーの容量をさらに256k(25万余り)に上げ、使うエリアを分割してチャンネル数を増やす事と、長点の長さ情報を増やす事を考えました。
短点パドルの信号と、2つのプッシュスイッチの組み合わせで、4チャンネルのメモリーにアクセスする方法を考えました。
オープンドレインのNANDを用い、増設する2つのいずれかのプッシュスイッチを押すと、従来の2つのどちらかのプッシュスイッチと、短点パドルを押した信号を出すものです。これで4チャンネル版になりました。

長点の長さ情報は増やし、短点の1/4から何と64倍の長さまで記録/再生できるようにしました。ハイパー長点と名付けました。
スペースも別の方法で10秒を超えるものまで記録できるようにしました。エレバグキー7型です。
これを使えば、縦振れ、バグキーその他の大概のキーの信号が、長点入力から記録され、再生されるようになりました。
これは”CWレコーダー”と名付けてCQ誌に投稿し、2004年の5月号に掲載されました。また多数の反響がありました。

  

写真左 CWレコーダー  写真右 内部の様子

この頃には、エレバグのリリースをウォッチされ、読者の方のために何枚もの基板や、そのエッチング用のパターン図やフィルムなどを提供して下さる方、またお知り合いの方のためにエレバグキーを製作してあげる方などが現れ(エレバグのサポーター、いや守護神!)、大変嬉しく、読者にも喜ばれました。

米国での発表

その後これは、短点もハイパー短点と称して、ハイパー長点と同じ機能を持ったものを作り、複式キーも記録/再生できるものに改造しました。
下の写真のようです。複式モードでも、勿論オートスペーシング機能が働き、ネバリが減ります。
これは、”Auto-bug Keyer”(”Elebug”は、どうも語呂が悪いようです)と名付けて、米国QST誌に投稿し、2006年の5月号に掲載されました。
これも反響を呼びました。米国や、それ以外の国々からも、マイコンやhexファイルの提供依頼が入りました。
中には、2台分を希望され、1台を父の日のプレゼントにするという方もおられました。hi.

QST発行元のARRLからは、”auther’s certificate”を頂きました。hi.



6ch、12chのメッセージメモリー

さらにチャンネル数を増やそうと、今度はキースキャンの方法で6チャンネルを直接選択できるものを作りました。
必要なI/Oが増えるので、PICマイコンは18ピンから28ピンのものに変更です。
これもハイパー長短点を搭載し、アイアンビック、ノーマル(ULTIMATIC)、エレバグ、複式の4モードで動作します。

このバージョンには、自動CQ(コールサインは入力/変更が可能)や、リピートなどのファンクションを搭載しました。
ビーコンのような用途にはリピートが便利、自動CQは、多くの場合に便利と思いました。

これをまたCQ誌に投稿し、2005年の4月号に掲載されました。エレバグキー9型です。

ここらで終わりかと思ったのですが、読者の方の要望に応じてさらに、シフトスイッチで切替える12チャンネル版に改良した9A型をリリースしました。CQ誌の2006年3月号に掲載され、どちらも多くの反響がありました。

  

写真左 エレバグキー9型と、木製パドル  写真右 内部の状況

この頃には、「エレバグ同志で交信した」、「こういう作品もエレバグと称していいでしょうか」などという話が入るようになり、エレバグキーが世に出たという感慨がありました。

8ch版
ADコンバーターを搭載した18ピンマイコンも、手軽に入手できるようになっていました。
これを使えば、タイマーでVRの抵抗値を測定する造作は不要で、マイコンとVRの接続は2本で済みます。
空いた1本分の1/0をシフトスイッチに利用して、4チャンネルのエレバグキー7型を8チャンネルに増強しました。エレバグキー8型です。
前記のようなファンクションも導入して、エレバグキー8B型となりました。
7型から簡単に改造が出来るので、ユーザー各位にバージョンアップを連絡し、対応しました。

外観は、Auto-bug Keyerとほぼ同じです。

米国での発表-2

ところがこの頃、7型から使っていたオープンドレインのNANDの入手が難しくなり、新規の製作に余り向かなくなっていました。
そこで、8ch版もキースキャンで4チャンネルにアクセスし、少しやりくりしてシフトスイッチも検出できるものを作りました。
ICの数が一つ減りました。^^)
使えるI/Oの数が少なくなったので、ノーマルモードと複式モードは、追加のファンクションで設定する事にしました。
これで、8B型とほぼ同じ機能を有するエレバグキー8A型となりました。

これを、”Auto-bug Keyer MarkⅡ”と名付けて、米国QST誌に投稿すると、2008年の3月15日版のQSTオンラインに掲載され、また反響がありました。

  

写真左 Auto-bug Keyer MarkⅡ (8B型)  写真右 内部の状況

これでやるだけやったかな、エレバグモードのメモリーのチャンネルも、8ch、12chもあれば十分(私が使うのはせいぜい2つか3つ。^^;)という気持ちになり、しばらくアップデートを考えませんでした。

そして年月が流れ・・・。

DJキーヤー

意外なきっかけで、製作初心者の方にでも作れる、シンプルなキーヤーを作る事になりました。2022年の事です。
これまでとは逆、簡素化を大目標に、機能、回路、そしてプログラムを考えました。
PICマイコンも、18ピンや28ピンではなく、8ピンです。ちょっとやりすぎですが、そこに”シンプル”のインパクトを求めました。
エレバグモードのメッセージメモリーやファンクションは諦めました。切替えスイッチも無し。
それでも、エレバグモード(勿論、オートスペーシング)とモードA/Bのアイアンビック、2チャンネルのメッセージメモリー、休止時の電流≒ゼロは譲れません。hi.
詳細は、こちらのDJキーヤーのページに! (”DJキーヤー”は、懐かしい名前です。)

大きな変更のため開発(簡素化ですが、^^;)に意外な時間がかかりましたが、基板も小さく、パターンも回路もシンプルに納まりました。DJ4A20型です。

これは久しぶりにCQ誌に投稿し、2023年の6月号に掲載されました。多数の頒布依頼を請けました。
”シンプル”が受け入れられたのかも知れません。
お付き合いのある八幡アマチュア無線クラブさんが、基板をCAD化し、綺麗な基板を多数用意してくれ、おまけに頒布そのものにもご協力を頂きました。

  

写真左 DJキーヤーと、接続した2台のパドル  写真右 キーヤーの内部

ノイズとの戦い

パドル、キー、スイッチ、いずれにも程度の差はあれ、ノイズはあるものです。
(パドルやキーは、接点のメンテナンスにより、ノイズを少なく出来るのですが・・・。)
エレバグの長点は、パドルを押す時間に合わせて出力するため、入力にノイズが入れば、それが出力に影響する事もあります。
(軽いタッチは、ノイズが多めのような気が・・・。)
ボケ防止のためにDJキーヤーと自作パドルで毎日オンエアするうち、このパドルのノイズを、マスキングして除去する方法を思いつきました。
詳細は、こちらのページに! DJ4A31型です。 4A20型を改造しました、と言っても、マイコンを取り替えただけです。hi.

パドル入力は2つパラレルにし、バグキーなどの手動キーは、長点側に繋ぐことにします。
バグキーのカスレは、このキーヤーで除去可能です。
私もバグキーの腕があれば、これを利用してオンエア出来るのですが・・・。^^;)

各エレバグキーも改良!!

パドル入力のノイズ対策は、その後さらに充実し、プッシュスイッチの入力のノイズ対策も講じました。
そしてこれらを、各エレバグキーにも盛り込むことにしました。久し振りのバージョンアップです。

いずれも、アイアンビックのモードA/B、ノイズマスキングモード/従来の高速モードが切り替えられるようにしました。
勿論、休止時の電流≒0です。
対象の型式とバージョン等は、下記のとおりです。

8A型   Ver.8A21Se3  キースキャン方式    8チャンネルメモリー(エレバグモードメモリー有り)
8B型   Ver.8B21d4   74HC09(NAND)式 8チャンネルメモリー(エレバグモードメモリー有り)
9A型   Ver.9A20Sb   キースキャン方式   12チャンネルメモリー(エレバグモードメモリー有り) 28ピンPIC
6E型   Ver.6E201    3チャンネルメモリー(エレバグモードメモリー有り) シンプル型
DJキーヤー Ver.4A31e   2チャンネルメモリー(エレバグモードメモリー、高速モード無し) シンプル型  8ピンPIC

また、8A、8B、9Aには、バグキーなど手動キーのノイズ除去に使いやすいDechatter(デチャッター)モード搭載版もあります。(DJ4A31は、搭載版のみ)
Dechatterモードについては、こちらのDJ4A31型のページをご参照下さい。

DeChatter機能だけ(キーヤー機能無し)に特化、小型化した”DeChatterは、2025年4月号のCQ誌に掲載されました。記事補足のページはこちら

お問い合わせ等は、下のリンクからメールをお送り下さい。

あとがき

”エレバグ”も、もはや一般名詞化した感があります。長短点の後のスペースを確保する機能はエレバグキーに不可欠な基本要件だったのですが、いつの間にかこれに”オートスペーシング”というしゃれた言葉まで使われるようになりました。
長年エレバグキーに取組み、発信して、自称”エレバグの元祖”と思っていますが、色んな方やメーカーがキーヤーやキーイング機能にエレバグを取り入れられるようになって、エレバグが完全に世に出たという感慨があります。嬉しいですね。

しかし、エレバグと称してオートスペーシングが無いものを、「何だ、使いにくい」と言われたら、本物のエレバグが泣きます。hi.

私は製作に偏重の傾向があり、CWは万年初心者ですが、エレバグ使用の方と交信するのを密かな楽しみにしています。hi.


リンク

エレバグモードの符号もそのまま記録/再生できる
エレバグキー8A21型

12chのエレバグモードメモリーの
エレバグキー9A20型

CWレコーダーから簡単に改造できる
エレバグキー8B21型

DJキーヤーの製作

DJキーヤー4A31型

エレバグキーへのお誘い


E-Mail to JA3KAB


Home Page